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水野園美
MIZUNO SONOMI

水野園美

有限会社のぞみ 代表取締役

笑顔と人間力に満ちあふれた、
介護のプロフェッショナルを育てたい。
厚生労働省の推計によると、2025年に全国で必要となる介護人材は約243万人。2019年時点の約211万人から考えると、毎年5万人以上を増やさないと追いつかない計算だ。急速に高齢化する日本において、深刻化する介護人材不足という大きな課題に、経営者はどう立ち向かうべきなのか。
水野園美
画像はイメージです。
若い人たちが介護業界を目指す未来をつくる

「若い人たちに介護の仕事をなかなか選んでもらえないこともあり、現在は多くの施設が人手不足です。本来は素晴らしい仕事ですから、私は介護を人気の職業にしたいのです」
こう語るのは、愛知県岡崎市でケアプランセンターやデイサービス、特定施設有料老人ホーム運営などの介護事業を行う、有限会社のぞみの水野園美代表取締役。介護の仕事は学歴も必要不可欠ではなく間口が広いが、現場の忙しさの中で、せっかく入ってきた人たちが潰れてしまうような問題も多く起こりがちだという。

「たとえば職員同士のコミュニケーションがまったく取れていなかったり、入所者の方に喜んでもらおうと決められた以外のことをやって怒られたり。また、技術だけを教えて人としての教育を行わない職場も多いため、虐待などの問題にも繋がってしまう。そうした課題を解決するために、私たちの施設では“笑顔”を理念として、職員がお互いを知って高め合うチームケアや、人間力の向上を目指す教育にも力を入れています」

水野氏自身まったく経験のないところから、33歳で介護業界に入った。当時はまだ介護保険制度が施行される前。
「家庭で色々な問題があったり、母を交通事故で亡くしたりと、人生のどん底状態で岐阜から岡崎に出てきました。そこで家政婦として介護の仕事を始め、様々な状態の方をケアしました。その中でALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんに出会ったとき、母と重なって見えたのです。母がもし助かっていても動けない状態だったら、自分はどう介護と向き合っただろうと」

そうした色々な想いを抱えてケアを続けるうちに、いつしか母の死を自然に受け入れることができるようになったという。
「その方はもちろん、ケアをさせてもらったお年寄りの方たちに、私自身が癒やされてきました。ですから恩返しのつもりで、介護を一生の仕事にすることを決めたのです」
後に介護保険がスタートすると、ヘルパーやケアマネージャーの資格を取得し、2005年に現在の会社を設立した。介護の仕事を「まさに天職」と話す水野氏が特に力を入れてきたのが、難病や末期がん患者、高齢者のなかでも終末期に近い人々に寄り添うことだ。

水野園美
人生の最期を自宅のように過ごせる場所

「人にとって、最後の数年をどう過ごすかはとても大切なこと。ご本人が生きてこられた人生の最後を、看取りに至るまでご家族と一緒にお手伝いできるのは素晴らしい仕事だと思います。私はそう考えて積極的に取り組んできましたが、終末期の方々のケアを嫌がる人も少なくありません。また、在宅で大変な苦労をされる利用者さんやご家族の姿を見ていたこともあり、きちんと看取りができる施設の必要性も痛感していました。そんなときに、利用者さんから在宅医療に力を入れておられる医師の方を紹介していただき、その出会いが『ふくろうの家』の開所につながりました」

豊かな自然に恵まれ、幼稚園やクリニックなどが入る「暮らしの杜」の敷地内に建つ「ふくろうの家」。コロナ禍の現在こそ規制があるが、定員29名と小規模なこの施設では24時間面会や家族の宿泊も可能で、まさに自らの家のように暮らせる老人ホームだ。
入居者の平均年齢は90歳以上。敷地内のクリニックの医師の管理の元、施設では過度な延命治療をせず、家族とも「施設に入った瞬間から看取りが始まっているんですよ」と、死についての意識を共有する。目指すのは本人も家族も幸福な最期。とはいえ、中には最愛の家族の死を受け入れられない人もいる。

「自分も家族を亡くしていますし、苦しい気持ちはよくわかります。そんな苦しみはないほうがいいし、後悔なくお別れをして欲しい。そこで昨年、一般社団法人『とねりこ』を設立して、ご両親や祖父母と生きているうちに感謝を伝え合う『生涯感謝の会』を開くなど、終活を支援する活動も始めました」
さらには自ら職員とともにグリーフケアの研修を受け、月に一度は人間力向上について学びの機会も設けるなど、職員を真のプロフェッショナルとして育てる教育にも熱心だ。

「いつも笑顔を絶やさず、入所者さんからも褒めてもらえる。そんなスタッフの皆を、介護のプロフェッショナルとしてどんどん広い世界に送り出すのが私の役割だと思っています」
母だけでなく父や兄など、家族を早くに亡くした自分だからこそ、家族を看取る人々の心情に寄り添えるのではないか。こう考える水野氏は、今後も家族の悲しみのケアを含めた看取りや、人間力豊かな介護人材の育成に力を注ぐという。
「さらに将来的には、認知症のお年寄りを対象にしたグループホームや、介護の仕事を目指すシングルマザーを対象にした母子寮の設立、発達障害の人たちに向けた就労支援なども行っていきたいと考えています」

水野園美

有限会社のぞみ 代表取締役
https://yumeno.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。