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宮囿昭一
MIYAZONO SHOICHI

宮囿昭一

株式会社エミリード 代表取締役

医療・介護サービスが充実した高齢者向け施設で、さまざまな社会問題を解決し、笑顔のある未来へ導く。
内閣府が発表した令和6年度版の高齢者白書によると、日本の総人口に占める65歳以上人口の割合は29.1%に達していることが分かった。超高齢化社会に突入している現在、最も重視されているうちの一つが介護問題であり、以前から介護業界における人材不足が指摘されてきた。広島県呉市を中心に介護・福祉事業を手掛ける株式会社エミリードは、働く環境の改善や人材育成などに取り組み、業界全体の底上げに奮闘。代表取締役の宮囿昭一氏は、「社名は“笑みを導く(リード)”という意味。最後には笑顔になってほしいという思いを込めている」と、全員が笑える社会の実現を目指している。
宮囿昭一
画像はイメージです。
高齢者向け宅食事業から介護・福祉事業へ参入。

現在のエミリードは、サービス付き高齢者向け住宅「さくらコンフォートくれ」を中心に、デイサービス「さくらデイサービスくれ」、訪問介護「さくら・介護ステーション呉中央」、訪問介護「さくら・介護ステーションミキ」、訪問看護「訪問看護ステーションさくら」という5つの事業を展開している。このうちさくらコンフォートくれと同じ住所に、さくらデイサービスくれと訪問看護ステーションさくらがあり、サービス付き高齢者向け住宅の入居者がデイサービスと訪問看護を利用する形になっている。

「さくらコンフォートくれの強みは、サービス付き高齢者向け住宅ではあるものの、日中は看護師が在中し、看取りまで対応していること。自立から要介護5までの高齢者を受け入れ、認知症の患者さんでも問題行動のないレベルであれば入居することができます。介護職員による24時間体制のサポートと看護師による医療サービスを提供し、何かあればかかりつけ医の先生に来てもらっています。立地は国立公園区域に指定されている野呂山のふもとに位置し、瀬戸内海を一望できる自然に恵まれた環境にあります」

現在、高齢者が利用する施設・住宅には公的施設と民間施設があり、あわせて主に9種類に分類される。なかでもサービス付き高齢者向け住宅は要介護度の低い比較的元気な高齢者向けの施設で、外出制限がないところが多いため、自由度の高い生活を送ることができる。厳密には老人ホームではなく、バリアフリー型の賃貸住宅という位置付けだ。つまり、さくらコンフォートくれは自宅のように生活ができ、かつ入居者に合わせた医療・介護に関するサービスが十分に行き届いている施設といえるだろう。

「公的施設の特別養護老人ホームや老人保健施設では、医療費の請求方法は包括払いとなり、1日当たりの診療点数が一定金額で決められています。すると薬の単価が高くなると上限を超えてしまい、そのような薬を服用している高齢者は受け入れが難しいのです。その部分は、民間施設の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が担わないといけないと感じています。もともとサービス付き高齢者向け住宅が広まった背景には、特別養護老人ホームは待機者が多くなかなか入居できないといった理由がありましたから」

宮囿氏が介護・福祉事業に携わるようになったのは2014年。生まれも育ちも呉市という宮囿氏は調理師の専門学校を卒業後、京都や東京などのホテルや飲食店で料理人としての経験を積み、最終的に広島市の百貨店の外食事業部に転職した。ところが、百貨店を運営する会社が業績悪化によって民事再生法を申請。若い頃から独立することを目標としていたためこの機に退職し、高齢者に弁当を宅配する会社を立ち上げた。

「40歳のときでした。介護保険制度がはじまった頃で、世の中の高齢化社会に対する関心が高まっていたため、高齢者に特化した配食サービスをはじめたのです。3~4年で経営が軌道に乗りはじめたのですが、今度は平成の大合併によって呉市の面積が大きくなり、車の維持費やガソリン代といった経費が利益を圧迫しました。そこで、介護・福祉事業に転換することを決め、2014年に株式会社エミリードへ商号変更。さくら介護グループとフランチャイズ契約を交わし、訪問介護をスタートさせたのがはじまりです」

宮囿昭一
外国人介護職員の受け入れを再び目指して。

その後、エミリードは事業を順調に拡大し、現在は約40名の従業員を雇用するまで成長した。宮囿氏が事業を行ううえで大切にしていることは、入居者・利用者とその家族、地域の人々との信頼関係をうまく構築・維持していくこと。そして、さまざまな業界で課題として挙げられている人材不足に対して、従業員を大切にして働く環境を少しでもよくしていくことだという。

「問題が起きるときは、従業員、入居者・利用者、その家族、ケアマネジャーさんと、関わっている人たちの言い分が異なるときです。とくに入居者が認知症の場合は、事実と異なることをおっしゃる可能性があるのでトラブルに発展しやすくなります。そうならないよう、すべての立場の人の発言を情報化し、LINEなどで共有することで信頼関係が損なわれないようにしています。地域に対しては年に数回イベントを開催し、地域の人たちにも参加してもらい、つながりをケア。災害時にさくらコンフォートくれは避難場所にもなりますので、そういった面でも地域に貢献したいと思っています」

従業員の働く環境については、プロの介護職員として尊重し、会社側の考えを押し付けないように配慮。加えて、問題が生じた際にはすぐにミーティングを行い、迅速に解決できる体制にすることで、風通しのよい環境を実現している。そして、人材育成についても、月1回の頻度で外部から講師を招き、コンプライアンスや虐待防止といったテーマに沿った研修を行うなどして、意識改革に努めている。また訪問介護では、ロボット技術を用いて介助者をアシストする機器などの導入も検討している。しかし、それでも待ったなしの状況なのが、人材不足という課題である。

「そのために外国人介護職員の受け入れを考えています。実は以前に、ベトナムのホーチミンで家事サポートを提供する事業を行っていました。現地の家庭にスタッフを派遣するだけでなく、スタッフには日本語や介護の仕事も教えて育成し、ゆくゆくは日本に来てもらうという計画でしたが、コロナ禍によって事業が頓挫してしまいました。その事業を復活させる可能性もありますし、現在、介護での外国人の受け入れ方法はEPA(経済連携協定)、在留資格の介護、技能実習、特定技能1号の4つがあり、さまざまな方法で検討しているところです」

次の構想として考えているのが、医療により特化した施設の運営だという。具体的には、特別養護老人ホームや老人保健施設では受け入れてもらいにくいといわれているパーキンソン病などの重度な疾患をもつ患者の受け入れだ。訪問診療や緊急時における24時間体制の往診に対応し、介護職員だけでなく看護師も24時間体制で常駐を目指す。
「生活の中に入り込む介護は究極のサービス業。誰もが介護される側になるときが来るのだから、入居者・利用者によりよいサービスを提供するのは当然」と、その先に笑顔が絶えない社会がやってくることを信じてやまない。

宮囿昭一

株式会社エミリード 代表取締役
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※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。