
高齢者向け宅食事業から介護・福祉事業へ参入。
現在のエミリードは、サービス付き高齢者向け住宅「さくらコンフォートくれ」を中心に、デイサービス「さくらデイサービスくれ」、訪問介護「さくら・介護ステーション呉中央」、訪問介護「さくら・介護ステーションミキ」、訪問看護「訪問看護ステーションさくら」という5つの事業を展開している。このうちさくらコンフォートくれと同じ住所に、さくらデイサービスくれと訪問看護ステーションさくらがあり、サービス付き高齢者向け住宅の入居者がデイサービスと訪問看護を利用する形になっている。
「さくらコンフォートくれの強みは、サービス付き高齢者向け住宅ではあるものの、日中は看護師が在中し、看取りまで対応していること。自立から要介護5までの高齢者を受け入れ、認知症の患者さんでも問題行動のないレベルであれば入居することができます。介護職員による24時間体制のサポートと看護師による医療サービスを提供し、何かあればかかりつけ医の先生に来てもらっています。立地は国立公園区域に指定されている野呂山のふもとに位置し、瀬戸内海を一望できる自然に恵まれた環境にあります」
現在、高齢者が利用する施設・住宅には公的施設と民間施設があり、あわせて主に9種類に分類される。なかでもサービス付き高齢者向け住宅は要介護度の低い比較的元気な高齢者向けの施設で、外出制限がないところが多いため、自由度の高い生活を送ることができる。厳密には老人ホームではなく、バリアフリー型の賃貸住宅という位置付けだ。つまり、さくらコンフォートくれは自宅のように生活ができ、かつ入居者に合わせた医療・介護に関するサービスが十分に行き届いている施設といえるだろう。
「公的施設の特別養護老人ホームや老人保健施設では、医療費の請求方法は包括払いとなり、1日当たりの診療点数が一定金額で決められています。すると薬の単価が高くなると上限を超えてしまい、そのような薬を服用している高齢者は受け入れが難しいのです。その部分は、民間施設の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が担わないといけないと感じています。もともとサービス付き高齢者向け住宅が広まった背景には、特別養護老人ホームは待機者が多くなかなか入居できないといった理由がありましたから」
宮囿氏が介護・福祉事業に携わるようになったのは2014年。生まれも育ちも呉市という宮囿氏は調理師の専門学校を卒業後、京都や東京などのホテルや飲食店で料理人としての経験を積み、最終的に広島市の百貨店の外食事業部に転職した。ところが、百貨店を運営する会社が業績悪化によって民事再生法を申請。若い頃から独立することを目標としていたためこの機に退職し、高齢者に弁当を宅配する会社を立ち上げた。
「40歳のときでした。介護保険制度がはじまった頃で、世の中の高齢化社会に対する関心が高まっていたため、高齢者に特化した配食サービスをはじめたのです。3~4年で経営が軌道に乗りはじめたのですが、今度は平成の大合併によって呉市の面積が大きくなり、車の維持費やガソリン代といった経費が利益を圧迫しました。そこで、介護・福祉事業に転換することを決め、2014年に株式会社エミリードへ商号変更。さくら介護グループとフランチャイズ契約を交わし、訪問介護をスタートさせたのがはじまりです」