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三浦洋一朗
MIURA YOICHIRO

三浦洋一朗

洋デンタルオフィス広尾 院長

歯科医の可能性を広げるオーダーメイド治療
「コンビニより多い」などと言われ、その過当競争ぶりが取り沙汰されがちな歯科業界。洋デンタルオフィス広尾院長の三浦洋一朗氏に、日本の歯科業界の問題点や、それに対する自身の取り組みについて伺った。
三浦洋一朗
すべての分野で専門医レベル以上を目指す

「私はきちんとした治療を行うことで、日本における歯科医のステータスをもっと上げたいんですよ」と語る、「洋デンタルオフィス広尾」院長の三浦洋一朗氏。アメリカでは、10代の若者のなりたい職業で歯科医は常に上位にランクされている。これに対して日本ではトップ200にも入らない。この状況を変えていきたいのだと言う。
その背景にあるのは、日本の歯科業界を取り巻く環境にあると三浦氏は考える。欧米と日本ではさまざまな違いがあるが、そのひとつが専門医制の普及。

「欧米では、虫歯の治療はこの医院、被せ物はこのクリニックというように、ひとつの分野に特化した専門医性が確立しています」。一人ですべての分野を網羅するジェネラリストは、個々のレベルは専門医に及ばないのが一般的だ。
「得意な専門分野の診療のみを行ったほうがより追求できるので、日本でも専門医制度が受け入れられるのではないかと、私が歯科医になったころは思っていました。しかし日本では、一人の歯科医に全部治療してもらいたいという考え方が根強く、この状況は変わりそうにありません」

それならば、すべての分野において、専門医と同等以上のレベルでの診断力、技術を習得しようと三浦氏は決意した。
「一つの専門性の目しか持っていないと、多角的に診ることができない場合もあると考え方を変えました。学ぶには時間も費用もかかりますが、そこまで準備して受け入れることこそ真の医療人としての真摯な姿勢ではないのかと思ったのです」

一方で、日本では専門医レベルの治療が技術的な面だけに走る傾向にある点にも警鐘を鳴らしたいと三浦氏は語る。
「最新の治療法を導入するのは結構ですが、誰に対してもそれを使ってしまう。たとえば人工歯では、今はメタルの代わりにジルコニアというセラミックが流行していますが、この素材は硬いので、歯ぎしりなどの癖がある方に使うと、人工歯に接する天然歯が割れてしまう可能性があります」

虫歯の場合でも、本来はまずなぜ虫歯になったのかという原因を突き止め、予防対策を行ったうえで、食生活を含めた患者のライフスタイルに合わせた治療を行うべきところだが、ただ悪い部分を削って済ませてしまう。そうした木を見て森を見ず、といった治療をしている歯科が多いのだと言う。

三浦洋一朗
歯科医という仕事の楽しさややりがいを伝えたい

「そもそも、歯の痛みというと、多くの方が虫歯や歯周病を思い浮かべると思いますが、実際には、体の姿勢や使い方、重心の位置の悪さなどが原因となり、歯や顎の痛み、噛み合わせの不調につながっていることも多いのです。ですから全身から口の中を診ていくということもとても重要なのですが、これをわかっている歯科医師もまだまだ少ない」

そこで洋デンタルオフィス広尾では、歯科治療に加えて、患者一人ひとりの生活や習慣、趣味、性格と向き合う「オーダーメイド治療」を行っている。この治療で目指すのは、歯のケアを通じて患者の生涯を通じた健康をサポートすることだ。
「歯科医院は歯が痛いから来る所ではなく、健康を得たり、きれいになったりといった、自分を高めるという目的を楽しみに来る場所という位置づけにしていきたいですね」

歯科に限った話ではないが、病気に対しては治療以上に重要なのが予防。しかし日本では、特に歯に対する予防への意識はまだまだ低い。これは国を挙げて取り組むべき問題だと三浦氏は語る。
「スウェーデンやフィンランドなどでは、口腔内の健康が全身の健康に繋がることに昔から気付いていて、20歳まで矯正治療や予防が無料だったり保険が効いたりします。そうすることでその後50年、60年という長い期間にかかる医療費が抑えられ、国の負担を減らせるとともに、国民が健康になることで国力が上がるわけです。国家規模でプラスがあり、歯科医がそこで果たせる役割はとても大きいはずなんですよ。しかしこの考えは日本ではなかなか受け入れられません。これには日本の健康保険制度の問題もあります。制度自体は経済的に苦しい方が治療を受けられるというよい点もある反面、矯正治療の多くもそうですが、従来の歯科の範疇を超える新しい治療は全額自費負担の自由診療になってしまう。歯科医はもっといろいろな広がりがあり、ニーズもある、やりがいのある職業なんです」

問題は山積みだが、オーダーメイド治療をはじめとする自らの活動を通じて、若い医師や学生に、歯科医とはもっと楽しい仕事だということを伝えていきたいと語る三浦氏。自身が主宰する勉強会から若い医師を海外の学会やシンポジウムへ送り出すこともしている。
「素晴らしい出会いと学びを重ねるたびに、自分も同じように高度な医療を提供し続けていきたいと鼓舞されるもの。もちろん私自身の勉強も今後一生続きます。そして医療人としてだけではなく、一人の人としても成長していきたいですね」

三浦洋一朗

洋デンタルオフィス広尾 院長
http://www.yodental.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。