Powered by Newsweek logo

枡田耕治
MASUDA KOJI

枡田耕治

KM Pacific Investments Inc. 代表取締役社長

日本経済を支えるファミリービジネスが、
世界の舞台へ羽ばたく手助けをしたい。
北米で金融・不動産事業家として活躍する枡田耕治氏の心には、三代続く家業への想いが常にある。豊富なキャリアを活かし今チャレンジするのは、日本の優れたファミリー企業が世界へ羽ばたく土壌作りだ。
枡田耕治
心のあるアドバイスで、後継者難に光を

バンクーバーを拠点に展開するKM Pacific Investments Inc.の事業は多岐に渡る。カナダでの不動産投資、開発、管理、コンサルティングなどを手掛けるほか、商業用不動産の再開発事業では、詳細な市場分析をもとに古い建物をハイテク企業向け倉庫、医療関連施設などに適した物件に改築し価値を向上。現在、複数のプロジェクトが進行中だ。

そして、もう一つの事業の柱がファミリービジネス事業。日本の同族オーナー企業の経営者に対するアドバイザリー業務だ。経営と資本、家族の情が混然一体に絡み合う事業体には強みも弱みもある。枡田氏は中立な立場で各世代のインタビューを行い、ミーティングを実施。課題を解決するとともに、家業の歴史をひも解き、新たな価値として捉え直す。

北米を舞台にグローバルに展開する不動産事業、そして日本におけるファミリービジネスへのアドバイザリー業務。二つは対極にあるようにも思えるが、枡田氏にとって両事業は密接につながっている。横浜で三代続く建築・不動産会社の跡取りとして生まれ、家業と向き合い、考え、悩みぬいた経験から生まれた事業だからだ。

「幼少期から、食事のときは絶対に無言。背筋が悪いと父から竹の定規を背中に当てられました」と振り返る枡田氏。厳格な父のもとで、跡継ぎとしての期待を受けて育った長男だ。

その後、13歳でカナダの学校に進学したのは、グローバルに活躍する経営者になるべきという父の考えによる。相互不理解による差別や偏見に悩みながらも、ラグビーなどを通して異文化に溶け込み、米国の大学に進学。卒業後は家業の一環として現地の投資・金融事業に従事した。現在、自分で会社を設立した枡田氏は、家業から離れているが、そこに至るまでには、父との確執、誤解、数限りない葛藤、苦悩があったという。

カナダで投資家として成功を収めた自らのキャリアに誇りをもつ一方で、後継者としての期待に応えられなかったことには今も痛みを感じている。そして、今でも自分の根底には家訓である「感謝」と「共存」が息づいており、全ての仕事において、理念を裏切っていないか自問自答してきた。

戦後多くの世界的企業を生んだ日本の中小企業の強さの根底には、精神性を含めた家業の強さがあると、自身の経験を踏まえて枡田氏は確信している。

「現在も、日本の会社の約9割は中小企業で、その大半がファミリービジネスだと考えられています。そして、その多くが深刻な後継者難に苦しんでいる。家業の素晴らしさ、難しさを知る私だからこそできることがある。理論一辺倒ではなく、心情をくみ取って、適切なアドバイスを続けていきたい」

一方で、海外で育ち、ビジネスを展開してきた枡田氏は、日本企業の今後について、強い危機感がある。
「大半の日本企業は、世界の土俵に立てておらず、その現状に問題があると感じていない。そんな日本の社会、メンタリティを変えるために何が必要なのかを問い続けてきました」

枡田耕治
日本企業が世界の土俵に立つために

そして今、枡田氏が掲げる自らのミッションは、日本のファミリービジネスから世界に通用するリーダーを輩出すること。その実現のため、リーダーが共存し、切磋琢磨できるフラットなネットワーク構築を進めている。このネットワーク自体が興味深いが、その活動の構想もユニークだ。

「例えば、後継者教育を目的とした企業留学の企画。海外企業との人材交流がない中小企業の後継者に、海外での仕事ぶりを肌で学んでもらうことで、『世界慣れ』したリーダーを創り出し、母体企業のグローバル化を可能にするものです」
ファミリービジネス事業がグローバルな視点で広がりをもってくると、もう一つの事業の柱である不動産事業との融合も見えてくる。

「私はバブル崩壊直後、ニューヨークで働いていましたが『日本人は不動産投資の素質がない』と言われて悔しかった。日本人でも、欧米人以上に良いものが作れることを証明したい。投資などを通じ、海外の開発プロジェクトを手掛け、各企業の財務基盤の強化と事業拡張、世界への足掛かりを実現していきたい」

構想がすぐに結果を生み出すとは考えていない。しかしファミリービジネスは長期的な視点で事業の未来を考えられるのも強みだ。

「家業を継いだ経営者は、子供や孫のために種をまき続けるもの。私自身、三代目として生まれ育ち、今の会社では創業者です。現役の経営者として、また親として、未来の『おじいちゃん』として、事業をつなげていきたいと思っています」

枡田氏が未来の事業構想を説明する際に使った印象的な言葉が「ホライズン」。それは水平線の向こう、つまり海外への視線とともに、永続する家業の未来の地平、その両方を表しているように感じられた。

枡田耕治

KM Pacific Investments Inc. 代表取締役社長
https://www.kmpacific.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。