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桑原雄一
KUWAHARA YUICHI

桑原雄一

株式会社モノクレア 代表取締役

エンジニアの働き方を再定義し、
人の役に立つシステム開発を目指して
システム構築プロジェクトにおける開発設計・構築までを幅広く手がける株式会社モノクレアは、2010年の創業以来、プロトタイプ開発に特化した事業スタイルで実績を残してきた。その技術力もさることながら、エンジニアの働き方を再定義する取り組みの数々は、同社の成長を裏付けするうえで特筆すべき点でもある。エンジニア業界の未来に光を灯す、エリート集団の挑戦と野望を追った。
桑原雄一
独自の成果を出せる人材を育てる

少子高齢化が進む現代、人手不足は喫緊の課題だ。それはエンジニア業界も例外ではなく、企業は挙って新たな道を模索し、ロボット開発や外国人労働者の雇用促進を試みる。そんななか、同社の代表取締役を務める桑原雄一氏は、少し変わった視点を持っていた。

「当社に必要なのは人手ではなく、人材です。ロボットでもできるような仕事をする人が増えていくだけでは、あまり有効な手立てとは言えません。私が求めているのは、自分にしかできない仕事をもつ人材を育てていくことなんです」

研修期間は最低でも2カ月間を設け、より実践的な研修を心がけているという同社。「とくにトライアルアンドエラーを積み重ねていくことは非常に重要で、いきなり正解を出すことよりも、どう正解に辿り着いたかという過程を大事にしていきたい」と話す桑原氏。その中で無数のフィードバックを積み上げながら、失敗を次に活かしていけるような研鑽に労力を惜しまない育成が特徴の一つだ。

また、同社は働き方においても革新的な試みを行っており、地方採用を行い、地方在住社員の在宅勤務実績がある。毎朝必ずオンライン上で会議を行い、現状の進行状況などを確認した後、各自の業務に入る。電車遅延による業務の遅れなどは言い訳にならず、自らのタスクに集中できる環境を確保してきた。

福利厚生制度では社宅借り上げを実施し、本人が希望した物件を会社名義で賃貸する形式を採用。その中で家賃の10万円までを会社が負担し、入居者一人につき3万円まで支給するなど、その待遇は驚くほど手厚い。給与査定は交渉・面談の場を年2回設け、その都度各自のプレゼンを行うことで、相応の価値や結果が出ていれば給与が上がる仕組み。僅か半年で100万単位の年収を上げる社員も珍しくないという。

「自分の仕事に責任をもって欲しいですし、責任をもって成果を出したからには、給与を上げるのは当然のこと。まずは会社として社員を育てていく姿勢を見せていくことが重要だと考えています」と桑原氏。それが社員のモチベーションをあげ、技術を高める一因にもなっているのだろう。

桑原雄一
役に立つための自己表現ができる会社に

そもそも、そうした働き方や環境づくりは、桑原氏自身が会社員時代から探求し続けてきたことでもある。東京理科大学理学部を卒業後、独立系システムインテグレーターに入社した同氏は、様々な新製品開発に携わりながら技術を磨いた。その後、外資大手のアクセンチュアに転職し、実績を携えて29歳で独立を果たしている。

「会社員時代からエンジニアの働き方やシステム開発の在り方、給与体系や待遇に至るまで、すべてに納得がいっていませんでした。しかし雇われている以上、発言権はない。それが独立の意思を固めるきっかけでもあったんです」

とはいえ、創業時から現在のスタイルが出来上がっていたわけではなく、当初は手探りの状態が続いた。たった一人で会社を立ち上げ、位置情報を使った自社WEBサービスを開発していた。無収入の状態が約半年間もあったという。

しかし、そんなときにいつも頭を過るのは、「人の役に立つ開発がしてみたい」という思いだった。
「当時は位置情報などの開発にも携わっていたので、例えばマッチングアプリなどを開発することも選択肢にはありましたが、単にお金儲けをしたいわけでなく、自分にしかできない仕事で人の役に立ちたかった」

そうした思いが徐々に浸透していき、大手企業のプロジェクト担当から声がかかるようになっていった。現在も受注の約9割が紹介によるものだ。それは何より、迅速で柔軟性のあるプロトタイプ開発に特化してきたからに他ならない。

特に現在のシステム開発の分野では大規模プロジェクトが横行し、様々なルール決めも必要になる。しかし同社のように少人数・小規模でプロジェクトを形成し、限られたコストで試験的にシステム開発ができることは非常に重宝されるスタイルだ。最初は目に見えないものでも、プロトタイプで目に見える程度まで具現化することで、正式にプロジェクトを進めるか否かの判断材料にもなりやすい。

そうした事業モデルがエンジニアの働き方を再定義することにもつながり、ここ数年は人材育成にも力を入れるようになった。「安易にエンジニアを増やす業界にならないためにも、当社の存在意義を発揮していきながら社員が自己実現できるような会社をつくること」が当面の目標だ。夢を描けるエンジニア業界をつくるために、彼の挑戦はこれからも続いていく。

桑原雄一

株式会社モノクレア 代表取締役
https://www.monocrea.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。