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桑原伸一郎
KUWAHARA SHINICHIRO

桑原伸一郎

株式会社テックメイク 代表取締役社長

日本のモノづくりを根底から支える、
省人化システム構築に向けた飽くなき戦い
少子高齢化による人手不足が深刻な課題となっている日本において、ロボットを使った自動化システムが注目を集めている。そのなかで大きな躍進を遂げている企業が、株式会社テックメイクだ。工場の自動化装置(FA装置)や垂直多関節ロボットを使用した省人化システムの開発などを手掛け、人口減が予想される様々な業界を下支えする役割を期待されている。代表取締役社長を務める桑原伸一郎氏に、省人化システムの最前線について話を伺った。
桑原伸一郎
イノベーションのために、トライ&エラーの精神を

もともとソフトウェアエンジニアだったという桑原氏は、ハードウェアエンジニアの父が創設した同社に加わり、2001年以降から省人化システムの構築に従事してきた。そしてあるとき、転機が突然やってくる。「システムの中でロボットを使えないか?」と、半導体メーカーからの相談があったのだ。当時、今から約20年前は、産業用ロボットといえば自動車の製造現場で使われる大掛かりなものしかなく、桑原氏もロボットシステム開発に関しては未知の領域だった。

「ロボットシステムに精通した技術者を探したのですがなかなかおらず、自分でやるしかないと引き受けることにしました。でもやるからにはきちんとしたものを作りたいというのが、プロジェクトに関わるすべての人の想いでした」
そうして必死で作り上げたロボットシステムは、予想を上回る形で業界内外から大きな評判を呼んだ。新しい顧客からも依頼が殺到し、そのときの成果が現在の礎となっている。

この果敢に挑戦をしていく社風こそ、テックメイクを成長させてきた要因でもあった。「特に日本の企業は、失敗が歓迎されないような風潮にあると感じています。それでは社員はなかなか挑戦に踏み出しづらい。社員のトライ&エラーこそ、イノベーションに求められる最も重要な要素だと思うんです」と桑原氏は続ける。

「日進月歩していく業界の中で、3年先、5年先に普及するであろう技術を常に先取りしていくため、世の中にないことを考えて作っていかなければいけない難しさがあります。そのため、当社に来てくれる方にも、新しいことに興味をもち、トライ&エラーを続けられるメンタルを求めています」

ロボットシステム開発は間違いなく同社の強みだが、桑原氏自身もトライ&エラーの精神で挑戦を続ける。あえてロボットシステム開発に固執せず、あくまでも省人化システムの構築そのものに注力していくのだという。
「ロボットというのは、人手不足を解消するための一つの手段に過ぎません。省人化システムのメーカーとして、多様で新しい技術を磨いていくことができれば、それを活用していくことが当社の使命だと考えているからです」

桑原伸一郎
日本のモノづくりに光を射す、メイド・イン・ジャパンシステム

桑原氏が見つめるのは、日本のモノづくりの未来だ。ロボットを使った省人化システムは自動車製造や半導体の製造現場を中心に普及しており、今後は、人手不足が深刻な介護や飲食業界においても導入が期待されている。しかし、実際に現場に導入するには多くのハードルが存在することも事実だ。

「介護や飲食業界など、人が働く環境が前提にある職場でロボットを導入するためには、ロボット用にインフラを整備する必要があります。例えば蛇口から水を出すにも、ひねって水を出すのではなくて、ボタンを押して水が出るような環境にすればロボットが導入しやすい。インフラさえ整えば、省人化できる余地は多分にあるということです」

世界市場の6割を日本製品が占めているロボット業界。しかしここ数年は、日本製のロボット導入の伸び率は他国と比べ減少傾向に転じており、直近5年間の伸び率は中国が500%、韓国が104.6%に対して、日本が58.9%に留まっている。そこで同社は、これまで省人化システムを開発・導入してきた半導体、車載、医薬品、物流業界等に加え、介護や飲食などの他業界にも領域を広げていく構えだ。

「評価を受けてきた日本の匠の技を、ロボットという生産装置に伝えてシステムに移行すれば、関税のかからない海外でモノづくりをしても日本ブランドの品質が維持できるようになると考えています。メイド・イン・ジャパンというより、メイド・イン・ジャパンシステムのモノづくりが可能になる。そうすればコストも削減でき、他業界にも進出できるかもしれない」

桑原氏が目指している先にはいつも、“日本が昔から誇りにしてきた質の高いモノづくり”がある。そうした誇りをもてる仕事を今後も続けていくことが、当面の挑戦だと桑原氏は語る。
「少子高齢化で働き手がいなくなり、海外企業に押されて日本のメーカーがシェアを失ってしまえば、日本で稼げなくなった人たちが海外の企業へ出稼ぎにいくという未来も十分に考えられる。つまり私たちの役割は、先代の人々が頑張って作り上げてきた豊かさを絶やすことなく守っていくことでもあるんです」

桑原氏がこれまで、国内外で実際に見てきたモノづくりへの危機感、そして未来の働き手を守るための決意は並々ならぬものがある。次代の日本のモノづくりを支える同社の躍進を切に願うばかりだ。

桑原伸一郎

株式会社テックメイク 代表取締役社長
http://www.tech-m.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。