
バス保温クリーナーを生み出したパイオニア。
1965年、クマガイ電工は貴金属の商社に勤めていた熊谷氏の父が脱サラをして大阪で創業。金や銀を触媒に使った電気接点材料を製造販売する会社としてスタートした後、加工工場として発展し、1982年に会社が躍進する起点となる出来事がおこった。観賞魚用のサーモスタットやヒーターを製造する話が舞い込み、初の自社ブランド「サンアート」の商品として売り出したところ高評価を得たのである。
「ちょうど昭和の高度成長期で、生活に余裕が出てきた家庭では熱帯魚を飼うことがブームになった時代です。当時のサーモスタットは機械的にオン・オフするバイメタル式が主流だったのですが。クマガイ電工では他社に先駆けて電子回路化。接点を持たず半導体で制御するため、故障が少なかったことが人気の理由でした」
しかし、サーモスタットやヒーターはあくまでも趣味の世界のもので、生活に不可欠なものではない。この経験で培った温度を厳密にコントロールするという技術を、日頃の生活の中で役立てられないかという目的でたどり着いたのが風呂だった。観賞魚用ヒーターの大型版をイメージし、湯水を張った浴槽に手をぬらさずに本体を取り出す発想から、商品を浮かべて、ユーザーが好みの湯温を維持。さらに循環機能を加え、お湯を浄化しながら保温するというバス保温クリーナーが誕生した。当時、24時間風呂という商品がすでにあったが、さまざまな面でバス保温クリーナーは優れていた。
「一般的な24時間風呂は、大型の本体を浴槽のフチに設置し(工事が必要)、浴槽内の湯を循環させるために配管処理を行います。湯水は吸い上げ時や配水時に、折角加温したお湯が配管での熱ロスで冷めてしまいます。それに対して、バス保温クリーナーは直接浴槽に入れるため、ヒーターのエネルギーロスがなくランニングコストが極端に安い。工事不要のため賃貸住宅でも使うことができ、当時の商品価格は24時間風呂の4分の1から3分の1でした。加えて浄化機能によって最長で一週間水を変える必要がなく、上手く使えば1年で商品代を補えるくらいのガス代や水道代を節約することができます」
1990年に誕生したバス保温クリーナーは時代の変化に合わせてアップデートを繰り返した。現行モデルではお湯を循環させる際にミネラル成分が溶出し、温泉のような温浴効果が得られるなど、充実した機能を誇る。しかし、もっとも注目すべき点は品質に対する信頼性であろう。20~30年も前に購入したバス保温クリーナーを、今でも大切に使い続けている顧客がたくさんいるという。
「機能をシンプルにしてお求めやすい価格を実現するなど、時代によってお客様のニーズに細かく対応してきたこともロングセラーになった理由の一つだと思います。また、商品が故障すると、一般的には新商品への買い替えを勧めますが、修理部品の在庫がある限りは修理にも対応しています。これまで愛着をもって使われてきたお客様は、修理後も以前と同じように使うことができることを知るととても喜ばれますね。それほど長い間愛用していただいているのは、私たちとしてもとても喜ばしいことです」