
建設費用の検討・管理・適正化を行うマネジメント業務
新築や建て替えに関わらず、ビルの施工において大きな課題になるのが建設費の削減だ。日本国内でマンション経営などを検討する際、建設会社に発注する方法は長らく「設計施工方式」か「設計事務所主導による相見積方式」の2種類だった。こうした旧来の方法は、営業管理費がかさんだり、コストが不透明になるデメリットもみられた。このような課題に対して建設業の専門家ではない施主が不利益を被るのを避けるため、近年、第三の発注方法として注目が高まるのがコンストラクション・マネジメント(CM)方式だ。
国土交通省の『CM方式活用ガイドライン』によれば、CMとは、“発注者の利益を確保するため、発注者の下でコンストラクションマネージャー(CMR)が、設計・発注・施工の各段階において、設計の検討や、工程管理、品質管理、コスト管理などの各種のマネジメント業務の全部または一部を行うもの”とある。
株式会社土地活用は、2009年からCMサービスを主に取り扱い、堅調に業績を伸ばしている。代表の越川健治氏は「CMは米国では1940年代から広く用いられている建設生産・管理システムのひとつです。ごく分かりやすく例えると、建設費の適正化を行うレフェリーのような仕事です」と解説する。越川氏は大学の建築学科在学中から、建築コストのマネジメントに興味を抱いていたと語る。
「大学院で国土交通省の建築研究所の研究者と関わる機会があり、そこで初めてコンストラクション・マネジメントを知りました。当初は米国で大規模・複雑なプロジェクトを管理する方式として認識していましたが、建設に関わる費用の透明化という点で強く興味を感じ、その後今に至るまでの考え方に大きな影響を受けました」
越川氏はゼネコンでの現場監督やCM方式での発注業務経験を経て、マンション・デベロッパーで開発業に従事。リーマンショックの影響を受けながら不動産業界の現場を経験して、改めて「建設業界に詳しくない事業主にとって、ためになる仕事がしたい。CMを広める仕事に戻ろう」と決意したという。同社が提供するのは、独自ルートから下請専門工事会社に直接見積交渉を行い、元請総合建設会社(ゼネコン)に専門工事会社を紹介する「ゼネコン活用型CM」だ。越川氏は「建設に関わるコストについては、詳細の説明責任がないこともあり、情報を閉じて顧客に伝えない習慣が根付いていました。施工会社はゼネコンと下請専門工事会社の2種に大別されますが、当社のCMサービスはこの双方に統一図面・数量での見積を取ります。費用明細をガラス張りにすることで適正価格が明らかになり、10-18%の工事費の圧縮が見込めます」と語る。