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近藤 嵩
KONDO TAKASHI

近藤 嵩

株式会社オーガンテック 代表取締役

世界初となる日本発の器官再生技術で、
日本の再生医療産業の未来を切り拓く
国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、日本で65歳以上の高齢者が占める割合は、2050年には約4割にもなるという。未曾有の少子高齢化時代を迎える日本において喫緊の課題となっているのが、国民医療費の抑制と健康長寿社会の実現だ。
そうした課題に立ち向かうべく、日本発の器官再生技術の事業化を目指すのが株式会社オーガンテック。世界初となる画期的な技術とアイデアで、再生医療の普及を目指す同社の近藤嵩代表取締役に、事業の現状と未来に向けた展望を聞いた。
近藤 嵩
画像はイメージです。
日本の器官再生医療の先駆けとして

スポーツ医科学を専門に学んだ早稲田大学時代は名門のラグビー部で活躍し、大学卒業後は豊田通商に入社。その後は、世界最大級のコンサルティングファームであるアクセンチュアや、国内独立系プライベートエクイティファンドなどに勤め、事業のオペレーションから経営の意思決定、ファイナンス分野などでの知見を積み上げてきた近藤氏。

「企業経営に必要な素養を身につけていくうちに、いつかは自分で手触りのある事業をやりたいと思うようになっていました。そうしたタイミングで知り合いから、「素晴らしい研究をされている方がいるので、事業化などの部分で手伝ってもらえないか」と、理化学研究所の器官誘導研究チームを率いる辻先生を紹介してもらいました。辻先生のチームでは長年、器官再生技術の研究を進められており、すでに毛包器官や歯、唾液腺や涙腺の再生に成功しています。世の中に大きなインパクトを与えることができるこの技術を商用化して世に出すことが、日本における“知財産業”育成のモデルケースになり得るのではないかと考え、共同研究開発や事業化に取り組んできたのです」

2022年1月には、毛髪再生医療と次世代インプラントによる歯の再生事業をコア事業とし、本格的な資金調達を開始。2023年1月にはリード企業として小林製薬より出資を受け、現在は事業化に向けた動きを加速させている。
再生した毛包器官の移植によって正常な発毛を実現する毛髪再生医療については、早ければ2024年の臨床研究の実施を予定。
「世界初の革新的な毛髪再生技術である当社の技術を少しでも早く社会実装することで、日本の器官再生医療の先駆けとなりたい」と近藤氏は力を込める。

また、最近は日本でも“国民皆歯科検診”制度の導入が検討されているように、健康寿命を伸ばすために重要となるのが口腔内の健康状況だ。その治療法として挙げられる従来の入れ歯やインプラントなどの人工物では、噛むという機能や審美性はある程度回復できたとしても、知覚や免疫機能といった生理的機能を回復させることはできない。
「対して、当社が提案する次世代ハイブリッドインプラントでは、インプラントの周辺に歯周組織を再現することで、歯の生理機能も再現することが可能です。こうした技術を広く社会に普及することで、歯の悩みを抱える人々への貢献に加え、国民医療費の低減などを通じた社会への貢献も目指したいと考えています」と、近藤氏は未来を見据える。

近藤 嵩
再生医療の普及で健康長寿を実現

 その画期的な技術に大きな注目が集まる一方で、社会実装に向けた課題もある。
 「たとえば毛包再生については、非常に複雑な作業となるため人の手作業によるオペレーションが大半を占めており、現状の方法ではどうしてもコスト高になってしまいます。そこで、精緻な作業の中でも機械などを使えるところは自動化を進めるなど、コストイノベーションに向けた取り組みを進めているところです。他の器官再生についても同様ですが、当社が目指すのは一部の特権的な人々ではなく、より多くの患者様に我々の技術をお届けすること。細胞培養などには精緻な作業が多く、自動化にはまだまだ大きなハードルがありますが、パートナー企業の皆様とも力を合わせて実現していきたいと考えています」

また、次世代バイオハイブリッドインプラントでは現在、医療機器としての承認プロセスに予想外の時間がかかっている。
もちろん医療は人の命に関わる分野であり、新たな技術を社会に実装する際にはできる限りリスクを下げる必要がある。一方で資本力のないベンチャー企業や研究機関の場合、承認までのプロセスが長引くうちに資本が尽きてしまい、膨大な予算と時間を使って生み出された重要な研究の成果が、世の中に出ずに終わってしまうというケースも少なくない。
「日本でバイオベンチャーなどの新産業を育てるためには、当局と現場が会話をしながらより良い承認のプロセスを探っていくことが大切。我々としても、そこに少しでも貢献していきたいと考えていますし、当社の技術の社会実装を加速させる手段の一つとして、国内のみならず海外での臨床の実施可能性などを含め、検討をおこなっているところです」

そう話す近藤氏が、毛髪再生医療と次世代ハイブリッドインプラントの社会実装の先に目指すのは、より高度な臓器再生医療の実現だ。
「たとえば腎臓の再生医療が普及すれば、透析を行なっている患者様のQOL向上はもちろん、大きな国民医療費の削減につながります。再生医療の世の中への浸透は、患者様にも社会にも大きなベネフィットをもたらすもの。今後も、日本が世界に誇る技術とマーケットをつなげる役割を果たすため、これまでの仕事を通じて信頼関係を構築した多くの人々のお力も借りながら、株式上場などを通じた研究開発資金の調達や、株主をはじめとするステークスホルダーの皆様や社会の利益の最大化のために邁進していきたいと考えています」
日本の再生医療産業発展のパラダイムシフトとなり得る、日本初の器官再生医療。株式会社オーガンテックの大きなチャレンジの先に、“医療大国”日本の未来が見えてくる。

近藤 嵩

株式会社オーガンテック 代表取締役
https://www.organ-tech.jp
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。