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小島真
KOJIMA MAKOTO

小島真

ピーエフシー株式会社 代表取締役

生き残りをかけ、関わるすべての人に喜んでもらえる薬局を目指す
「安定」「安泰」なイメージがある調剤薬局。しかし、近年M&Aによる買収・売却が盛んに行われたり、調剤報酬・薬価制度が改正されたりと、その神話は崩れてきている。そんな状況の中で、薬局は生き残るためにどのような取り組みを行っているのだろうか。保険調剤薬局「ポプラ薬局」を14店舗展開する、ピーエフシー株式会社の小島真氏にお話を伺った。
小島真
選ばれる薬局には、良いスタッフと心地よい環境が必要

「弊社は『私たちは関わるすべての皆様と夢・喜び・心からの感謝の共鳴を志しています』というクレドを設定しています。我々だけが良くて成り立つなんてことは、あり得ません。患者様やスタッフをはじめ、お世話になっている医療機関や問屋からも『ピーエフシーで良かった』と思ってもらえるよう努めています」

そう話すのは、代表取締役の小島真氏。祖父・父ともに薬剤師という家系に育ち、自身も自然と薬学の道へ。薬剤師の資格は取得したものの、「大きな世界で色んなことを経験したい」と、薬科大学を卒業後は山之内製薬(現アステラス製薬)にMRとして就職した。営業で病院を駆け回っていたが、独立することになったドクターから声を掛けられたことで、薬局を起業することに。1996年のことだった。

薬局は特殊な事業で、八百屋や魚屋のように地域に根付いているものの、食品のように価格競争ができないため、同業他社と差別化がしにくい。そんななか、小島氏は「地域の人に選ばれる存在になるためには“スタッフの質”が重要」と考えている。一緒に働く仲間との関係や職場環境づくりには特に注力しており、人手が足りないときにはひとりの薬剤師として率先して現場に立っている。現場の様子やスタッフの気持ちを肌で感じることができ、経営のヒントも見つかるという。

「スタッフ間に不平不満やわだかまりがあると、患者様や関わる方に喜んでもらえる薬局には成り得ません。心地よい環境であって初めて、まわりに気遣いができるし、患者様に心からの笑顔を提供できるのです。そして、心地よい環境というのは、会社やまわりが提供してくれるものではなく、本人の日々の努力の積み重ねで形成されていくもの。“いかに継続してまわりを心から思いやれるか”が重要です。それを実践できる仲間を迎え入れるために、80名のスタッフ全員の採用面接に立ち会い、この話をしてきました」

薬局事業は、関わりのある病院が閉まった場合共倒れになるため、不安定な環境にある。また、国内には5万店以上の薬局があるが、今後は半分程度に減ると言われており、企業努力をしない薬局はどんどん淘汰されていくという。
「薬剤師の在り方も変わっていきます。かつて薬剤師資格は『持っていれば一生困らない』と言われていましたが、これからはそうはいきません。薬局の数は減っていくのに薬剤師の数は増えていくので、需要と供給のバランスが崩れます。薬剤師も一人の立派な社会人でなければ、必要とされなくなるのです」

小島真
患者を待つだけの薬局から、仕事を獲得していく薬局へ

そこで小島氏は、スタッフに人としての在り方を説くため、スタッフと共同で行動指針を作成した。「りっぱな社会人になるために」「りっぱな会社員になるために」「りっぱな自分自身になるために」の3カテゴリーから成り、項目は15ある。これを各店舗で毎日1つずつ読み合わせして、意識を高めている。新卒生の研修にも力を入れており、既存の研修ブックをもとに、個々の得手不得手に合わせてアレンジした指導を行っている。「スタッフ達には、どこに行っても求められる人間であって欲しい」と小島氏は心から願っている。

一方で、各薬剤師が処方元の医師がどのような意図で薬を処方しているかを理解し、患者にきちんと説明できるようにするため、関連医療機関とのコミュニケーションにも力を入れている。少なくとも来局する患者にとっては日本一の薬局であること、「他では分からないことも、ここに来れば分かる」と言われる存在であることを目指している。今後は、医療機関だけでなく、地域のケアマネージャーや有料老人施設とも積極的に関わり、地域連携を強化していくという。

また、「関連事業を展開することでメインの薬局事業を安定させたい」と、薬の臨床試験を支援SMOと呼ばれる治験施設支援事業にも携わるほか、訪問看護ステーション・薬剤師の派遣紹介業・医療機関の事業継承サポートなども構想中だ。
「関連事業の展開は、将来薬剤師の数が飽和状態になった際に、彼らの働き方の選択肢が増えるというメリットもあります。今までのようにただ患者様を待つのではなく、積極的に外に出て仕事を獲得していくつもりです」

関わるすべての人に喜んでもらえる事業を目指す小島氏にとって、“挑戦”とは?
「目の前のことを受け入れる覚悟をもつことですね。目の前のことを不満に思うのは、そのことを受け入れられていないということですから。そして、新たなことに取り組むときは、絶対的な自信をもつこと。関わる皆さんにとって良いことをやろうとしているのですから、上手くいかないわけがないでしょう。私は、“自分の存在を誰かに喜んでもらえている”という喜びを実感しながら生きていきたいと思っているんです。そういう考え方でいれば、事業も人生も上手くいくと信じています」
仕事人である前に、立派な人間であることの大切さを教えてくれる小島氏。同社はこれからも時代に淘汰されることなく、発展を続けるに違いない。

小島真

ピーエフシー株式会社 代表取締役
http://www.pfc-poplar.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。