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髙後恵介
KOUGO KEISUKE

髙後恵介

株式会社タマノ 代表取締役社長

顧客重視の姿勢を貫きつつ、 老舗滅菌器メーカーをリブランディング。
かつては医療の世界で「滅菌器といえばタマノ」とまで謳われながら、次第に業界での存在感を失っていった株式会社タマノ。90年以上の歴史を誇る同社の先頭に立ち、この老舗滅菌器メーカーを再び表舞台に引き上げるべく奔走するのが、2016年から社長を務める髙後恵介氏だ。
髙後恵介
画像はイメージです。
日本の医療を支えてきた、確かな技術と製品力

1927年に創業した株式会社タマノは、東京都板橋区に本社を構える医療機器メーカー。主力製品となるのが、100度以上の蒸気で医療用メスなどを滅菌する高圧蒸気滅菌器だ。部品の調達や製品の組み立てを行う東邦技研や、蒸気滅菌器の主要パーツとなる圧力容器を製造するステンレス技研をグループ内に抱え、競合他社の滅菌器製造まで請け負うほどの技術力をもつのも同社の強みである。

蒸気滅菌器の他にも、ガス滅菌器や超音波洗浄器など、主に医療現場で使われる高品質な滅菌器の製造やメンテナンスを行ってきた。
HIVが世界に広がった1980年代、タマノの滅菌器の売上はピークを迎えたが、そこからは減少が続き、髙後氏が社長となった5年前にはピーク時の4分の1にまで落ち込んでいた。
「社長に就任した当時は、業界関係者の方から『タマノさんってまだあったんだ』と言われることも多かったですし、医療機器の大手卸売業者さんのカタログなどにも、当社の製品がまったく掲載されていないような状態でした。そこで、まずは知名度の回復を図ろうと。ちょうど数十年ぶりに新製品が出るタイミングでもあったので、医療機器の展示会に出展することにしたのです」

さらには、卸売業者へのカタログの掲載依頼や、ウェブサイトのリニューアルなどを、髙後氏が先頭に立って推進。ほぼ全員が先輩となる従業員たちを、粘り強く説得しなければならないこともしばしばだった。

「ベテラン社員の皆さんは会社の歴史を作ってきてくれた功労者ですが、時代にそぐわないスタイルは変えなくてはいけません。たとえば、ひと昔前の医療機器の世界であれば、販売店に製品を売ってやっているんだという意識がメーカー側にありましたし、お客様からの問い合わせを安易に販売店へ回すこともありました。しかし現在は、一般の家電製品と同様に、お客様にわかりやすく製品の情報を発信し、自社製品を選んでもらえる流れを作ることも医療機器メーカーの存在意義のひとつだと思います。そうしたブランディングを一つひとつ地道に行い、現在は少しずつ成果が見えてきたところです」

特にウェブサイトの刷新については、髙後氏がもともとシステム開発の現場にいたこともあり、デザインから仕様までをきめ細かくプランニング。「分かりやすさ」をテーマに、読めばトラブル解決につながるユーザーサポートページを充実させるなど、顧客に寄り添った仕様に大きくリニューアルした。

髙後恵介
製品を通じた顧客満足の最大化を、純度高く追求したい

「当社は滅菌器だけを作ってきた小さな会社ですから、拠点の数も東京と大阪、中部と多くはありません。お客様の近くに拠点がないというデメリットを埋めるために、今後も取扱説明動画やWebミーティングツールを使用したお困りごとへの対応など、ITツールを活用した取り組みを広げていきたいと考えています」
現在は、壊れにくい新商品の開発や、特別な紫外線を活用した新たな滅菌手法の開発など、中小企業ならではの着眼点やスピード感を活かした新製品開発にも挑んでいる。

「紫外線を使った滅菌器はすでに販売されていますが、我々が作るのはそうした家電製品ではなく、医療機器としてのクオリティをもつ滅菌器です。コンパクトで安価なものになる予定なので、美容業界などで導入していただけるのではないかと思います。また、使い捨ての医療器具が増えていることから、大掛かりな滅菌器を必要としない内科の医院などの需要にも合う製品になると考えています」
こうしたブランディング強化や新製品開発のみならず、アジアをはじめとする海外展開への足がかりを作るなど、社長就任から5年で数多くのアクションを起こしてきた。そんな髙後氏が経営者として重視するのは、ブレることのない顧客重視の姿勢だ。

「現在、当社で行っている施策のすべての原点は、現場メリットの重視です。言葉にするのは簡単ですが、我々のような中小企業は、本気でそこに取り組まないと生き残ることができないと思っています。そうした私の理念や目標に共感してくれる社員を増やすためにも、頑張っている社員にきちんと報えるような仕組みづくりも大切にしたいですね」
かつての業界での存在感を取り戻すべく、若き経営者が取り組む老舗のリブランディングは、着実に花を開かせつつある。

「まだまだ道半ばではありますが、少しずつでも前進しながら、滅菌器メーカーとしての存在感をより確かなものにしていきたい。さらにその次のステージとしては、滅菌という行為を必要とする新たな市場を開拓し、滅菌器や滅菌という行為自体を世の中に認知してもらうきっかけとなれるような企業を目指したいと考えています」

髙後恵介

株式会社タマノ 代表取締役社長
https://kabu-tamano.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。