画像はイメージです。
ブランドとインフルエンサー双方の気持ちを熟知
サイバーバズとデジタルインファクトが2020年に共同で行ったソーシャルメディアマーケティングの市場規模調査によれば、2020年に317億円だったインフルエンサーマーケティング市場は2022年に519億円、さらに2025年には723億円規模に成長する見込みとなっている。「ECビジネスがある限り、この市場はまだ伸びていくと思います。ただ消えていく会社もたくさんあって、独自性や差別化ができていないと生き残れないジャンルですね」と語る、株式会社グラムラフタースタンダード代表取締役の小寺信仁氏。同社の最大の強みは、インフルエンサーマーケティング専業ではなく、自社アパレルブランドの製造や販売も行っていること、そして代表の小寺氏自身がインフルエンサーでもあることだ。
小寺氏は2003年にWebデザイナーとしてEC業界に入り、その後ECサイトの運営やブランドの立ち上げに携わってきた。そしてブランディングの一環としてSNSを使ったPRを行うにあたり、実験として個人的に始めたSNSがきっかけで自らインフルエンサーに。ブランドやインフルエンサーとの関係性が高まったことが、19年の会社設立につながった。従って、案件の出し手であるブランドと受け手であるインフルエンサー双方の気持ちを経験上よく理解している。「だから他よりも細かな要望に応えられるし、よりクイックに対応できます」。そしてPR商品に合っていて、かつ信頼できるインフルエンサーをすばやくキャスティングすることもできるというわけだ。
そしてもうひとつの強みは、ただインフルエンサーをキャスティングするだけにとどまらず、売上げを上げるためのさまざまな実戦的な提案を行える点。
「インフルエンサーマーケティングが流行し始めたころは、ブランド側もどこに依頼したらよいの? という感じだったので、ただキャスティングすればよかった。しかし今はその段階はとっくに過ぎて、次のフェーズに入っています。インフルエンサーをキャスティングして、リーチ数を確保しました。それだけじゃ意味がない。どうせやるならば、しっかり売上げアップにまでつなげないと」
コンサル領域まで入り、数字をつくりあげていく
「僕たちはZOZOTOWNの流通を伸ばすことを得意としているのですが、インフルエンサーによる投稿はクーポン配布やタイムセールのタイミングに合わせて集中して行ってもらったりして、確実に売上げを上げることを意識しています」と語る小寺氏。SNSにおけるPRのルールが厳格化される以前から、同社はあえてPRであることがわかるようなスタイルをとっていたと言う。
「インフルエンサーマーケティングは、迷っているユーザーの背中を押してあげること、買うきっかけをつくることが大事だと思っています」
さらに、ZOZOTOWNをはじめ、プラットフォームに応じて「ここでPRするならこちらの商品がいいですよ」といったアドバイスも行っている。
「逆に、売れないと判断したアイテムは引き受けないようにしています。MDから売上げにつながるところまで追いかけるコンサル的なところまで入りこんで、ブランドさんと一緒に数字をつくりあげていく。そんな新しいインフルエンサーマーケティングに挑戦していきたいですね」
そんな小寺氏は、20年からはアパレルやそれに関連するインフルエンサーマーケティングとはまったく畑違いのビジネスも展開している。それは植物のショップ「RAFLUM(ラフラム)」だ。植物といっても花や一般的な観葉植物ではなく、多肉植物のうち、塊根植物(コーデックス)と呼ばれるマダガスカルや南アフリカ、南米の植物やアガベ(リュウゼツラン)といった、日本では珍しい植物を専門に扱う。
「元々は5、6年前から個人的にコレクションしていたものだったのですが、すっかりハマってしまって。ECショップを始めれば、在庫という名のコレクション(笑)を増やせるかなと思って趣味半分で始めたら、少しずつ売れ始め、コレクションも評価されるようになっていきました」
21年10月には阪急うめだ本店で開催されたアウトドア関連のイベントで塊根植物のポップアップストアを出店。22年5月には阪急メンズ東京1階入口で単独でのポップアップストアイベントも開催した。さらに23年には実店舗も構える予定だと言う。
「塊根植物とカフェを組み合わせたショップにしたいですね。一般的な観葉植物と比べると高価なものなので、よりお気軽にみなさまに楽しんでもらえるように提案していきたいと思っています」
現在はグラムラフタースタンダードのオフィスでラフラムの在庫を管理しているが、近々発根の管理などを行う専用のハウスも用意するそうだ。そこではいわゆる農福連携の形で障がい者を雇用し、社会貢献につなげていくと言う。他にもさまざまなアイデアをもっていると語る小寺氏。フットワーク軽く、活躍の場を縦横無尽に広げていく小寺氏の挑戦はこれからも続いていく。