画像はイメージです。
金融先進国での“出会い”が創業の契機に
北山氏は公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員の資格を有し、慶應義塾大学卒業後、当時の日本を代表する監査法人であった中央監査法人に入所。大手銀行や証券会社など、金融機関の監査が業務の8割を占めるという会計士としては異例の道を歩む中で、投資信託を組成運用するアセットマネジメントの仕組みなど、金融業界や資産運用に関する知見を広めていった。
「当時、金融機関などでは日々変動する投資信託の基準価格を計算するため、VisiCalcという表計算ソフトを使っていました。私自身もそうしたシステムに興味があり、これなら自分でもできそうだという思いも抱いていたんです」
そう話す北山氏にとって大きな転機となったのが、中央監査法人を退所し、当時公認会計士協会の要職を務めていた公認会計士から命じられたアメリカ出張だった。
「ニューヨークのバーンズ&ノーブルという大型書店で、『Financial Modeling for Lotus1-2-3』という本に出会ったのです。当時、最先端の表計算ソフトであるロータス1-2-3を金融マンがどのように使えば良いかが紹介された本であり、当時のアメリカの金融マンにとっては必読の書となっていました」
ちょうど日本版のロータス1-2-3がリリースされるタイミングだったこともあり、日本に戻った北山氏は、同書の内容を日本の金融マンに向けて紹介する本の出版を日本経済新聞社に打診。1989年に出版した「金融マンのためのロータス1-2-3活用法」は、金融業界で大きな話題を呼んだ。
そして出版の翌週には、外資系保険会社から北山氏のもとに、「本に載っているシステムを作って欲しい」という依頼が舞い込む。「とても驚いたのを覚えています」と当時を回想する北山氏だが、その依頼に応えたことが、キャピタル・アセット・プランニング設立の契機となった。
NISA活用の最適化を生成AIで実現
2016年にはジャスダック市場への上場を果たし、現在の東証スタンダード市場で上場するなど、1990年の創業以来、金融業界に特化したシステムインテグレーションを軸に堅調な成長を続けてきたキャピタル・アセット・プランニング。その成長の背景にあるのが、金融業界に対する深い理解や技術力に加え、金融行政にスピーディかつ柔軟に対応する機動力、そして顧客本位の業務運営を目指す金融機関への迅速な提案力と開発力である。
日本の金融市場では、1996年の生保損保相互乗り入れや、2001年の確定拠出年金の開始、2005年の金商法施行・証券業法改正、2010年の金融商品取引法改正など、保険業界の市場開放や、より投資家の目線に立った市場やルールの整備が行われてきた。
同社ではそうした金融業界の大きな変化の波を捉え、銀行や証券会社、生保会社向けの新規システム開発に加え、プロのみならず一般のユーザーも使える、ゴールベースプランニングや資産マネジメント、相続や財産承継、事業承継にまで対応した“財活”のためのプラットフォームも開発・提供している。
金融ITサービス企業の世界ランキングであるIDC FinTech Top 100 Rankingでは、2017年から4年連続で世界のトップ100企業に入るなど、まさに日本を代表するフィンテック企業として、日本の金融業界におけるDXやテクノロジーの普及に貢献してきた。
「日本にも巨大なシステムベンダーが数あるなか、当社が成長し続けてこれたのは、金融行政の新たなニーズを的確に捉えながら、保険の契約者様や個人投資家の方々など、ユーザー様にとって使いやすくわかりやすいシステムの開発を追求し、それを提供し続けてきたからだと思います」
そう話す北山氏が創業時から大切にする理念が、「プロダクト開発はサイエンティフィックであるとともにアーティスティックでないといけない」というもの。正しい数字や最新のテクノロジーなどの科学的な部分に加え、提案資料やシステムのユーザーインターフェースなどをいかに美しく簡潔に見せられるか。そうした北山氏の理念は、同社のプロダクト開発を担うすべてのエンジニアに根付いている。
また、同社は公認会計士や税理士、日本証券アナリスト協会検定会員資格を有する専門スタッフで構成されるコンサルティングチームと、優秀なエンジニアからなるシステム開発チームを抱え、すべてのエンジニアやプログラマーにもAFP、CFP、FP技能士といった金融業界におけるプロフェッショナル資格の取得を義務付けている。システム開発と最新のテクノロジーに加え、専門的な業務知識も併せもつエンジニアが揃うことは、当然ながら新たなサービスやシステムの開発においても大きな強みでありメリットだ。
「現在、岸田政権は、国民の資産所得倍増プランと、生成AIの社会への浸透という二つの国策を実行しようとしています。前者の戦略としては、2024年から従来の積立NISA枠が年間120万円に拡大され、さらに年間240万円の成長投資枠が新たに設けられ、最大1,800万円の非課税枠となります。しかし、こうした非課税枠をどのように活用すれば良いのかは、なかなか一般の方ではわかりません。そこで現在、当社が開発を進めているのが、個々人の資産やライフプラン、ライフイベントに応じ、21世紀の新たな産業革命の起爆剤というべき生成AIがそれぞれのNISA枠の活用方法を最適化してくれ、個人銘柄までの提案を実行するシステムです」
まさに二つの国策に合致する画期的なシステムは、金融業界の上流から下流にまで精通し、フィンテック領域で知見を積み上げてきた同社だからこそ構築できるもの。美しく使いやすいシステムを通じて、金融や資産に対する日本人の意識を変革し、せまりくる人生100年時代、大相続時代に多くの人々が豊かな老後を過ごせる未来を実現する。日本のフィンテック分野で改めて存在感を増す、同社の壮大なチャレンジに注目だ。