
■東洋医学、現代医学、経験知をかけ合わせた独自療法
問診、目視、触診などで原因と症状を明らかにし、状況に応じて最適な治療を行うことを心がけています」と話す金本氏自身、柔道整復師と鍼灸師の国家資格をもつ経営者だ。手で筋肉を刺激し血行不良を改善する手技治療、歪みを矯正し神経と血管の圧迫を改善する背骨・骨盤矯正、ツボに刺激を与え自然治癒力を働かせる鍼灸治療など、出血を伴わない保存療法で体の痛みを和らげる治療を提供している。プロ野球選手を目指した少年時代、肩や肘を痛めると、叔父が経営する整骨院に通った。叔父の手にかかると、みるみる痛みが和らいでいく実感があった。その経験から、ごく自然に叔父のような治療家を志すようになったという。
叔父の後を追うように資格を取得した金本氏は、東洋医学と現代医学を融合させた独自の治療法の開発に着手する——。自律神経失調症や鬱の症状を、鍼灸や整体によって和らげる、自分なりのスタイルを模索する日々が始まった。「ストレスがかかると無意識に体が緊張することがある。緊張すると呼吸をする時に補助的に動く筋肉が凝り固まり、息苦しさを感じたり、疲れが取れないといった症状が出る可能性があります。また、脳につながる首の椎骨動脈の流れが悪くなると、思考が鈍くなるケースも考えられます。鍼灸というのは数千年にわたる経験知の蓄積ですが、たとえば頭痛にはこのツボが効くとわかっていても、なぜそれが効くのかは厳密には解明されていなかった。それを現代医学と重ね合わせ、効果を理論的に解明することで、鍼灸・整体からの改善を試みるイメージです」
きっかけとなったのは自身の不調だった。家族や周囲の協力を得て、考えられるすべてのストレス源を取り除いたつもりでも、改善された実感がないことから、心的原因だけではなく体にも原因があるのではないかと思い至った。自身の不調の原因を突き止めて、何としてもストレスフリーな日常を取り戻したい——。専門書を何冊も読み、自分の体で検証しながら治療法を確立すべく試行錯誤を繰り返す。これらの蓄積をマニュアルに落とし込み、研修などを通じて周囲のスタッフにも伝えていった。年月を重ねる中で少しずつ改良を加えた結果、悪い箇所をより的確に判断してツボを抑えられるようになり、施術時間の短縮にもつながった。結果的に、技術力をもったスタッフが育ち、現在の同社の事業拡大を支えている。