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金子元英
KANEKO MOTOHIDE

金子元英

かねこ内科リウマチ科クリニック 院長

患者主体の「心こそ大切なれ」をモットーに、関節リウマチをはじめとした全身性疾患に向き合う。
日本国内に70万人以上の患者がいると言われている関節リウマチ(以下リウマチ)。異常が生じた免疫が誤って自分自身の細胞や組織を攻撃し、関節が炎症を起こして腫れや痛みが慢性化。放っておくと骨が変形し、関節としての機能が失われてしまう。かつては寛解(病状が治まっている状態)するのが難しい病気だったが、免疫抑制剤や生物学的製剤の登場によって寛解率は50%を超えるまでになった。かねこ内科リウマチ科クリニックはかかりつけ医として総合内科を標榜する一方で、院長の金子元英氏はJCR(日本リウマチ学会)の専門医として活躍している。
金子元英
画像はイメージです。
心掛けているのは患者との信頼関係を築くこと。

金子氏の1日は早い。朝4時半には埼玉県川口市にあるクリニックに出勤し、6時半から診療を開始する。早くから始める理由は、多い日だと250人、1日平均170人を超える患者を診るためである。現在、約2500人の患者と向き合い、うち約900人がリウマチの疾患を抱えている。他には内科的疾患、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、さらに糖尿病や高脂血症、高血圧といった生活習慣病の患者も多い。重視しているのは人間関係を大切にし、正しい診断を行うこと。そのためにメディカルナビゲーターという医師や看護師、事務スタッフ間の連携を補佐する人員を配置し、患者の様子に逐一目を配っている。

「当院は予約優先制のため、予約なしで来られる患者さんはどうしても長く待ってもらうことが多くなります。しかし、イライラしていた人でも、次回の予約を無理に調整して取ってあげると心を開いてくれる。だから笑顔を絶やさずに対応し、問題のない患者さんに対しては、大丈夫というお墨付きを与えることで短い診療時間でも満足してもらっています。もちろん、じっくり診ないといけない患者さんには、十分に時間を割いて対応し、診療時間にメリハリをつけることで一人でも多く診られるように心掛けています」

そう話す金子氏は埼玉県川口市で生まれ、幼い頃は何度も肺炎になるなど体が弱かった。助けられたことが医師へのリスペクトに繋がり、小学生の頃は本を通じて人間の体の神秘性に惹かれた。そして、川崎医科大学卒業後は首都圏に戻り、日本大学医学部附属板橋病院内科に入局。全身を診たいという思いから、リウマチをはじめとした膠原病や血液、呼吸器、免疫に関する疾患を専門に診るようになった。その後、川口市医療センターとさいたま市にある救急病院の三愛病院を経て、2004年にかねこ内科リウマチ科クリニックを開業した。

「SLE(全身性エリテマトーデス)や混合性結合組織病といった膠原病は若いときに発症することもあり、大学病院を離れてからもずっと診ている患者さんもいます。そんな方々から『いずれは先生に命を預けたい』とおっしゃっていただき、ではどこで診ていくのかという課題がありました。もともと開業するつもりでしたが、これまでの患者さん達を大切にしたいという思いから、川口市医療センターから近いこの場所に開業しました。病院名に“内科”の文字を入れたのは、リウマチだけでなく全身を診ているため。体のどこかに何かがあったとき、まずは気軽に相談してほしいという、そんな思いから名前を付けました」

金子元英
患者を満足させるエフェクティブネスを重視。

金子氏がモットーとするのは「心こそ大切なれ」であり、前述の通り患者との真摯なコミュニケーションを経て信頼関係が構築される。心とは最終的に人それぞれの価値観に繋がり、価値観を共有できれば意気投合し、共有できなければ相容れない。そこには心という隙間があり、その隙間を埋めることがすなわち患者の価値観を理解し、受け入れることに繋がっていくのだという。

「医師という仕事をしていく中で、私の言っていることを理解できない患者さんが悪いと言ってしまうと、そこで終わってしまいます。だから患者さんに合わせて、いかに理解してもらえるように話ができるかが重要。そのために例え話をすることが多く、コミュニケーションの中で患者さんの家庭環境なども分かってきます。そのようにして、だんだんと心を開いてもらえるようにしています」

よって、金子氏は診療において患者がどう感じているのかを必ず聞くことにしている。これはPRO(患者報告アウトカム)と呼ばれるもので、症状が改善されているか、日常生活を問題なく送ることができているかといった、主観的な情報を重視するという最近の流れにおける指標となるものだ。そして、医療において大切なエフィカシー(効果)、セーフティー(安全性)、アウトカム(患者の意見)の先にあるエフェクティブネス(有効性)を意識している。

「例えば薬は最初に効果・効能があり、次に安全性が担保されて薬として成り立っています。万一、副作用があった場合は相談するわけですが、これが患者さんの意見になる。反対に薬が効いたときも患者さんの意見として表現され、これらがすべて合わさったところで初めてエフェクティブネスという最上級の答えが出てきます。だから求められるのはトータルでの患者さんの満足度です。もう一つ大切にしているものにペイシェント・エンパワーメント(患者自身の力)があり、これは患者さんの能動的な発言という意味。こうしてほしいという要望に対して、我々はどのように応えられるかということを常に念頭に置かなければいけません」

リウマチの治療にはJCRのプロトコールがあるが、治療方針の決め手となるのは「心こそ大切なれ」であり、金子氏は薬の効果・効能をパワーとスピード、そしてアキュラシー(的確性)という要素で捉える。病気を抑える力を表わすパワーと薬の効果を速やかに出すスピードは、患者が何を重視するかによって適切な度合いは変わってくるというわけだ。アキュラシーも患者の置かれている環境や状況によって変化し、例えば若い女性なら副作用の影響を受けやすい妊娠の問題が関わってくる。

「それぞれの薬にはメリットとデメリットがあります。それらを考慮し、短期から長期までを視野に入れながらステロイド剤、免疫抑制剤のメトトレキサート、生物学的製剤、JAK阻害剤といった薬を選びます。もちろん、診療では患者さんの要望も重視するので、コミュニケーションが大切。そして、価値はお互いの中で共有して育てていくものであり、病気になったからといって、そこには価値が全くないということではありません。必ず意味が隠れていて、その意味をどうやって大きなものへと育てていくのか。最終的にはこれでよかったと、喜ぶことのできる人生を患者さんには送ってほしいと願っています」

金子元英

かねこ内科リウマチ科クリニック 院長
https://www.kaneko-cl.net/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。