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石田行司
ISHIDA KOUJI

石田行司

ニューロンネットワーク株式会社 代表取締役社長

新たなヘルスヘア産業の創造によって"健幸長需"社会を実現する
厚生労働省は、従来の薬局の機能に加えて、健康に関することを気軽に相談できる「健康サポート薬局」制度を2016年から推進しているが、そのはるか前からそうした薬局づくりを行ってきたニューロンネットワーク株式会社。代表取締役社長の石田行司氏が目指すのは、ヘルスケアを新たな収益産業として確立することだ。
石田行司
医療に関するあらゆる情報をワンストップで提供

調剤薬局を大阪から全国に展開するニューロンネットワーク株式会社。2002年の創業以来、着実に業績を伸ばしている同社が目指すのは、薬局をトータルヘルスケアの窓口とすること。

「例えば皮膚アレルギーひとつとっても皮膚科だけではなく、ストレスからの可能性が強ければ心療内科も受診した方が良いのですが、一般の方が判断するのは難しい。そんな場合に薬局で適切な病院を紹介できます。その他にも薬やサプリメント、行政サービスなど、医療や介護に関することについて旅行代理店のような感覚で何でも相談できる場にしたい。現在調剤薬局は全国に約6万店ありますが、薬を出すだけならその半分でいい。しかしかかりつけ薬局として相談所としての機能をもつなら現在の数でも成り立ちます」と語る、代表取締役社長の石田行司氏。

また同社ではこれと並行して、オンライン診療やオンライン薬局などの整備も行っている。新型コロナウイルス禍が転機となり、今後はこれらの普及が進むと石田氏は語る。

「以前から、問診を経て採血や測定を行い、薬を処方するまでのプロセスに常に数時間かける意味はないと思っていました。新型コロナウイルス禍によって、多くの人が都市部に集まることや通勤が本当に必要なことなのか、疑問を抱くようになりました。リモートワークの普及など働き方が変わるなか、医療も変わります。ただ、医療は究極のアナログビジネスでもある。すべてをオンラインですませることはできません。トラブルにすぐ対処でき、困ったときに相談できるかかりつけの薬局は必要です」
そこで今後は地域の各薬局によって形成されるネットワークのハブとなる薬局をつくっていきたいと言う。

製薬会社に勤務していたころは、史上最年少管理職に就任するなど出世街道をひた走っていた石田氏。そんな氏が起業したのは、当時2歳の次女がインフルエンザ脳症によって重い障害を負ったことがきっかけだ。

「泣いている暇もないぐらい、通院や役所の手続きに忙殺されました。医療従事者の私ですら苦労したのに、もし身寄りのない高齢者や身体の不自由な方ならどれほど大変か。このとき、日本の医療システムを変えなければいけないと心から思いました。そして起業して、病気の予防から治療、再発抑制、介護保険の申請までワンストップで情報を提供できるような薬局を作ろうと決心したのです」

石田行司
医療や介護を収益産業化し、グローバル展開を目指す

「日本の医療を変えたい」。その思いに突き動かされるように、石田氏は薬局経営を軌道に乗せた後、新たな領域への挑戦を開始した。それは、医療業界と行政や異業種を結びつけ、ヘルスケア産業の創造を行う事業だ。

2011年に地域活性化総合特区に指定された、国際医療交流の拠点となる大阪府泉佐野市の「りんくうタウン」では、その立ち上げに関わるとともに、さまざまながん治療法を1カ所で提供する「りんくう出島医療センター」の整備に携わった。また吹田市、摂津市両市にまたがる吹田操車場跡地では、「北大阪健康医療都市(健都・けんと)」として、「健康・医療」をコンセプトとしたまちづくりが進められているが、こちらにも参画。

2012年からは医療を中心としたまちづくりの可能性を探る「メディカル・エコ・タウン カンファレンス(MET)」を主催している。医療業界人に加え、メーカー、不動産、金融など多様な業種の担当者が参加するこのMETからは、スポーツ用品メーカーのミズノが開発した吸湿発熱素材「ブレスサーモ」を採用し、寝具メーカーの西川リビングが商品化した毛布などのコラボレーションも生まれている。

「ヘルスケア産業創造事業を行ううえで重視するのは収益性。それがなければ広がっていきません。新たな収益産業としてのポジションを確立し、最終的には海外に輸出する。それが実現すれば、医療や介護は国や地域にとっての負担ではなく、新たな収益モデルになります」と語る石田氏。さらに今年からは、これまでの取り組みの集大成とも言える事業にも着手した。

「トータルヘルスケアタウン事業として、人間の誕生から終焉までの間に関わるあらゆる業種が連携し、適切に運用されるまちづくりを一からプロデュースします。健都をさらに凝縮したようなものになりますが、今はモデルタウン立ち上げのため、候補地を絞り込んでいる段階です」

5年後に予定されているモデルタウン完成によって、起業の際に思い描いた計画はほぼ実現されると語る石田氏。しかし氏が最終的に目指すものに対してはまだ道半ばだ。
「国民全員が、健康で長生きでき、最後まで幸せに過ごせるようになること。健"幸"長"需"の社会を実現することが夢です。次女は24歳になりましたが、生きているうちにその恩恵を与えてあげたい。いつか天国で娘に会った時、本当に幸せだったという言葉が聞けるように、何が何でもやり遂げたい。やるまでは死ねません」

石田行司

ニューロンネットワーク株式会社 代表取締役社長
http://www.neuron-net.com
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。