
企業の肩書きにとらわれず、時代の変化に対応する
石油給湯機を中心とした住設機器メーカーとして、1980年に創業した同社。元々の主力製品は石油ボイラーだった。当初は「自社製品を売る」という大きなポリシーをもっていたが、市場が大きく変化した今、業態にはとらわれていない。メーカーとして創業したからこそ圧倒的な商品知識、施工時のきめ細やかな配慮、人脈を活かした提案が出来ると考え、メーカーとユーザーをつなぐ「メーカー商社」として新しい道を進み出した。
「私の就任前後4年は赤字でした。就任後3年目でようやく黒字に転換しました」
そう語るのは代表取締役の伊奈紀道氏。オール電化とエコキュートの波が到来し、赤字に転落した渦中に社長に就任した。当時は全国のボイラー市場が50%減り、同社の工場の生産量も50%減る事態。そこで同社もエコキュートに着手し、自社では製造出来ないので仕入れて販売することにした。それまでは販売の9割を自社製品が占めていたが、徐々に商社としての機能を強めて赤字から脱却。今ではオール電化製品・太陽光発電システム・蓄電池の販売を行っており、仕入れ製品が販売の9割を占め逆転している。
2016年からは販路をビルダーに求めて新規開拓を進めているほか、蓄電池の研究開発も進めている。「今までは創電(太陽光発電)だけでしたが、これからは蓄電池です。10年経つと売電価格は大幅に下がるので、売電の魅力がなくなる。そこで、家庭で貯めて使える蓄電池の需要が高まります」
「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)事業」にも力を入れている。ZEHとは、自宅で消費するエネルギー量より自宅で作るエネルギー量が多い家のこと。同社ならではの幅広いネットワークを使い、資材調達からセミナー、アフターフォローまでをトータルでサポートしている。地球規模で温室効果ガスの排出量削減が叫ばれるなか、国は将来に向けた削減目標を明確にしている。同社はこの市場に絡んでいる限り、大ブレイクとまではならなくても、継続した売上の立つ商材を扱っていることになる。
低炭素化と水素社会の実現に向けて「水素給湯機」の研究開発にも取り組んでいる。水素を燃料とし、燃焼させてもCO2の発生はゼロという環境対応型給湯機である。山口県からの補助金を受けて、同県の3社と共同で研究開発と実証実験を進めている。また、同社は2019年4月に3つの事業コンセプト「美しい地球を未来の子供達に」「低炭素社会の実現に貢献」「再生可能エネルギーの最大化」を発表。省エネルギービジネスに特化した事業展開を行い、社会貢献を果たしていくことを全社員の誇りとしたい考えだ。