漢方の本質は患者の潜在意識と対話すること
漢方には望診(外貌や舌の状態を見る)、聞診(聴覚と嗅覚で判断)、問診(自覚症状などを聞く)、切診(脈や腹部などを触る)を総称して四診という診察方法がある。幾嶋氏は約25年前に、この四診に手相を見るという方法を加えた独自の診察方法を考案。手のひらの無数の線と9つの丘(指の付け根の膨らみ)の状態から患者の精神分析を行い、問診を補完する。この診察方法によって、西洋医学や一般的な漢方でも症状が治らなかった人たちからも相談が寄せられている。
「例えば動悸が治まらないというパニック障害の患者さんの場合、手相から心配性であることが分析でき、そういう人は漢方における五臓のひとつである腎が弱い場合があります。腎は不安な気持ちと関係があり、腰から下を担当している臓器なので、腰が痛くなることもあります。実際に患者さんに聞いて、腰痛があることがわかった場合は、腎に効く漢方薬を処方することで、腰の痛みや不安感が軽減され、症状が緩和された例もあります」
漢方には、自然界に存在するあらゆるものは木、火、土、金、水という5つの要素から成り立つ五行説という考え方がある。さらに、人間も自然界の一部と考え、身体の働きを五行説に当てはめ、肝、心、脾、肺、腎の5つに分けた考え方を五臓論という。これらの五臓は西洋医学の肝臓や心臓を指しているわけではなく、その他の働き方を含めたより広い機能を意味している。
「東洋医学では臓器と感情は密接に関わっているとされ、漢方では病気と関連する感情を怒、喜、思、憂、悲、恐、驚の7つに分類しています。臓器によって感情がコントロールされる場合もあれば、感情が臓器に影響を及ぼすこともあります。そして、肝は怒、心は喜、脾は思、肺は憂と悲、腎は恐と驚がそれぞれ関係しています。過度な怒りは肝を害しやすく、肝とは血液や気などの流れをコントロールするところなので、イライラする、気分が晴れないといった症状が現れます」。
一方の西洋医学にはカナダ出身の精神科医、エリック・バーンが提唱した交流分析の理論に基づいて、バーンの弟子であるジョン・M・デュセイが確立したエゴグラムという性格診断テストがある。人間の自我をCP(厳格な父のような支配性)、NP(優しい母のような寛容性)、A(落ち着いた大人の理論性)、FC(自由な子供のような奔放性)、AC(従順な子供のような順応性)の5つに分類し、それぞれの尺度を測る。
「五臓論とエゴグラムの概念は一致します。例えば、怒と関係する肝はCPに相当し、厳格な人は怒りっぽいものです。また東洋医学には掌紋医学という、手のひらの掌紋を見て診断するという分野があります。そして、五行説、五臓論、エゴグラム、西洋手相、掌紋医学の関係性を調べたところ、すべてがリンクしていることが分かりました。西洋手相における9つの丘は、掌紋医学における臓器と一致し、精神状態によって起こる症状を診るには、手相による精神分析が、症状との関係性を考察する手がかりになると考えています」