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転機となった海外発電機の輸入販売事業
伊地知氏は滋賀県で生まれ、両親の方針で中学受験を目指した小学4年生からは進学塾に通うなど、勉強漬けの日々を送った。
「テレビやゲームも禁止されていた当時、許されていた唯一の娯楽が読書でした。おかげで小学生の頃から読書をする習慣が身に付き、高校時代は年間で300冊以上の本を読むようになっていました。読書の習慣は今も変わらず、結果的にそうした習慣が、何事も一次情報にあたって調べる癖や、様々な事象を知ることで喜びを感じることができる、現在の自分の礎をつくってくれたのだと思います」
大学は同志社大学に進むも、幼い日々の反動から勉強よりも遊びに夢中になり中退し、その後は葬送会社の営業などを経験。営業成績は悪くなかったが、「もち前の探究心を活かせる技術職の方が自分には合っているのではないか」との思いを強くし、独学でプログラミングや制御回路設計などを学び、転職活動で出会ったシーエープラントに入社した。
「制御回路設計の技術者としての応募だったのですが、入社後はプラント工事の施工管理が主な業務でした。溶接や重量物の運搬、施工管理など慣れない仕事に悪戦苦闘し、望んでいた仕事とのギャップも感じていましたが、とにかく3年は続けようと、必死で目の前の仕事に取り組む毎日でしたね」
そして入社から約2年が経った頃、会社が新事業としてエネルギー事業部を設立。海外のガス発電機の国内輸入販売をはじめるにあたり、担当者としてアサインされたことが伊地知氏の大きな転機となった。
「外部から呼ばれた技術者とともに現地の研修などに参加し、発電システムの仕組みやメンテナンス方法などをゼロから勉強しました。もちろんすべて英語なうえ、難しい専門用語は辞書にも載っていない。説明書やマニュアルを翻訳するだけでもひと苦労でしたが、それ以上に自分で調べて理解を深めていくことに楽しさを感じていました」
その後、自らが立ち上げの準備を進めたガス発電機の輸入販売事業において、伊地知氏は技術責任者に就任。日本国内での知見の蓄積がない製品のスペシャリストを多数抱え、導入からメンテナンスまでをサポートできることが同社の強み。特に海外製発電機の輸入販売において、現在も同社の大きな武器となっているそうした知見と技術力は、伊地知氏が先頭に立って磨き上げたものだ。
培った技術力で社会課題への貢献を目指す
そして2022年には、先代社長の急逝に伴い代表取締役社長に就任。
「今後、会社として発電機の販売が伸びていくだろうという予測などもあり、総合的な判断で次の社長として私が選任されました。私としても、会社に拾ってもらったという気持ちが強く、順調に業績を伸ばしていた発電機事業や新たな事業の立ち上げを通じて、会社に貢献することで恩返しをしたいという強い思いがありました。そこで先代社長の思いを継ぎ、代表として会社の先頭に立つことを決意したのです」
社長就任後は、創業時から同社を屋台骨として支えてきた各種プラントへの人材派遣や試験運転、施工管理などの事業をさらに強化すべく人材採用や教育に注力。また、約10年前から推進してきたバイオガスや太陽光発電などの再生可能エネルギー事業の強化も図ると同時に、自らが手掛けてきた発電機の輸入販売事業も大きく拡大させた。
さらには、社員のやりがい向上や離職率低下を実現すべく、社内の働き方改革も推進。
「『社員がストレスを感じず働ける職場とはどのようなものだろう』と常に考えながら、小さな子どものいる社員などを対象にした在宅ワークの活用をはじめ、社員の働きやすさを念頭に置いた社内のルール整備を進めてきました」と、伊地知氏は話す。
そして2023年には、日本でも社会問題となっているフードロスへの取り組みから、規格外の京野菜を活用した食品加工事業もスタート。
「従来の事業も順調で会社として成長を感じていますが、そうした成長に満足せず常に新しい挑戦をしていくことが重要だと考えています。そのうちの一つが食品加工事業で、これはもともと先代社長が地元である京都の農家さんから相談を受けたことをきっかけに、将来的な事業化を思い描いていたもの。現在はすでに、市場に流通させることが難しい規格外の京野菜を使ったスープを販売し、他にもスイーツの開発に取り組んでいるところです」
先代社長の思いを受け継いだそんな新事業のほか、環境負荷の低減などを目指し、「今後はバイオガス事業にもより力を入れていきたい」と伊地知氏は展望を口にする。
「当社が蓄積してきた設備の導入からメンテナンスといった技術力を活用し、各地方自治体が抱える課題の解決にも貢献できればと思っています。現在は昨今の燃料費の高騰もあり、生ごみや牛糞の処理費用も高騰しています。同時に自治体が運営する施設の電気代なども高騰していますから、そこでバイオマスなどの再生可能エネルギーを使ったガス発電などを提案し、環境負荷の低減と各自治体が抱えるエネルギー問題の双方の解決を模索していきたい。バイオマス事業については、すでにいくつかの地方自治体との協議も進めていますし、今後は同分野でも大きな貢献ができる企業を目指したいと考えています」
限りあるエネルギーや資源をより有効に活用するため、今、何をすべきか、何ができるのかを常に模索し、果敢に実現を目指していく。新たな経営者のもとで挑戦を続ける、環境・エネルギーの総合マネジメント企業だ。