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菱川博行
HISHIKAWA HIROYUKI

菱川博行

株式会社ラティーナ 代表取締役

お金に働いてもらう資産運用を取り入れ、
“未常識”のファシリテーターが新時代へ導く。
DXの推進などで、以前は予想できなかったものが主流になっている現代。愛知県の株式会社ラティーナは、時代の変化を敏感に捉え、企業のコンサルティングや社内研修などを行ってきた。代表取締役の菱川博行氏は、将来は働くという概念が変わることを前提とした新しいビジネスを手掛けようとしている。
菱川博行
画像はイメージです。
多くの成功者が予測していた“未常識”という概念。

ラティーナの出発点は、雑貨の輸入販売だった。菱川氏の転機となったのは、プライベート・エクイティ・ファンドであるアドバンテッジパートナーズの創業者、リチャード・L・フォルソム氏との出会い。GAFAMと呼ばれる巨大なIT企業群が、どのように成功していったのかを独自に研究し、蓄積したノウハウを体系化して、コンサルタント会社としての基盤を確立した。

「参考になったのは、ナポレオン・ヒルの著書『成功哲学』です。彼はアンドリュー・カーネギーの依頼で、後に成功者となる多数の人物へインタビューをしたわけですが、気になったのがなぜカーネギーは成功者を見分けることができたのか。私なりに調べたところ、彼らの多くは未来に起きることを予測していました。今はそうでなくても未来では常識になっていること。私はこれを“未常識”と名付け、ビジネスが成功する鍵になると確信したのです」

コンサルティング事業を展開していく一方で、長男が幼稚園のときにサッカーを始めたことがきっかけで、2007年にFC Himawari 2007を設立。地元のジュニアとジュニアユースを対象としたこのサッカークラブで、菱川氏は代表兼総監督に就いたが、長男の高校進学時に転機が訪れる。ドイツのサッカークラブから声が掛かり、2人でデューレンとケルンを訪れた際に大きな衝撃を受けた。コミュニティデザインが浸透しているドイツでは、サッカークラブやオーケストラが地域に深く根付いていたのである。

「子供の練習試合でも多くの人たちが集まり、憩いの場として楽しんでいる。そこには集金する人がいて、みんなが5ユーロずつ寄付していたのです。サッカークラブは会費を集める必要がなく、その寄付で運営されていました。カルチャーショックを受けた私は、日本のサッカークラブにもこうした考えを取り入れなければ、スポーツという文化も廃れてしまうのではないかと危惧しました。同時に、草の根レベルで優秀な人材を育成していかないと、コミュニティデザインや地域の活性化はできないと考えたのです」

菱川博行
労働がなくなることを仮定したビジネスモデル。

帰国した菱川氏は、サッカーを通じて社会を引っ張っていけるような人材を育てていくことに注力するようになる。自分で判断し自分で考えるという能力をどれだけ高めることができるか。そのため、オール3の子供を育てるのではなく、潜在的にもっている5になる要素を小学生と中学生の9年間でどう伸ばしていくかという指導・教育にこだわった。そして、人材育成の結果が出始めた頃に次のステップへ進んだ。前述の“未常識”をベースにした新しいビジネスモデルである。

「サブスクリプション型ビジネスが浸透していることから、これからは物を買うというより、サービスを買うという時代に変わっていくと予想できます。コロナ禍では、人が動かなければ経済が回らない飲食・旅行業界は大打撃を受けました。だから人や物ありきではない経済を考えたときに、お金を働かせるという新しいスキームである資産運用が必要だと思いました。そして、お金が働いて新たなお金を生み出すことができれば、人が働かなくても経済は成立します。将来は労働がなくなる時代がくるかもしれないことを”未常識“として捉えています」

参考にしたのは海外のプロスポーツチームだ。例えばアメリカのメジャーリーグでは年金制度が存在する。テレビの放映権料や選手の肖像権による収入がメジャーリーグ選手年金基金に積み立てられ、これを選手会が運営。10年以上メジャー登録された選手なら、年間2000万円以上の年金を生涯にわたって受け取ることができる。つまりは資産運用を行っているわけで、保障制度が乏しいアメリカだからこそ、自分たちで保障をつくり出しているのである。

「世界中の金融機関の運用実績やデータを調べ、その中でリスクが最小で優秀なトレーダーを抱えている金融会社を見つけ出しました。独自のコネクションで提携し、資産運用の仕組みを構築。FC Himawari 2007で2年間検証した結果、予想以上の利回りによる実績を出しています。今後は資産運用によってお金に働いてもらうことで、会費をいただかなくてもサッカークラブの運営ができるようになります。そうなれば、野球やバスケットボールなど、さまざまなスポーツクラブにも利用してもらうことができます」

iDeCoやNISAの利用者が増えていることからも明らかなように、日本でもお金に働いてもらうという資産運用の考えは浸透しつつある。競合となる会社も、今後は増えるだろう。だが、菱川氏の目標は、労働がなくなるという未来へのファシリテーター(案内人)になることだという。“未常識”を証明することは、ベンチャー企業にしかできないことだからだ。

菱川博行

株式会社ラティーナ 代表取締役
https://www.rati-na.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。