
子どもたちの成長が企業の成長へ
留学は時代とともに進化してきた。古くは遣唐使、遣隋使といった国家レベルの留学、これが留学1.0。次に戦後、エリートレベルの学生が国費で学ぶ留学2.0。エリートだけでなく私費留学、高校生留学など多様化してきた現在は留学3.0の時代だと言われている。そして平田氏は、次の留学4.0を見据えたビジネスを展開しているのだ。
「語学や体験をする留学から、海外の教育システムを組み込んだ新しい留学を提案しています。例えば、デンマークが生み出したフォルケホイスコーレという教育システムがあります。これは自分探しの教育というか、自分が何になりたいかというところにアプローチする教育です。この教育を受けた子たちから社会起業家が生まれたりしていて、デンマークから北欧へ広がり、教育、社会福祉の面で世界一になっている理由のひとつだと思っています。必ずしも大都市が生み出すビジネスが人々に幸福をもたらしているわけではない。そういった教育プログラムを留学に組み込むことで日本も変えていけるのではと思っています」
新しい留学を生み出すうえで、平田氏は多様な人たちとのコラボレーションを推し進めている。例えばフィリピンの貧困問題を扱う社会起業家との共同企画では、貧困解決のために雇用を作り、流通を整えるといった実際の活動の中から研修を受ける。
「語学学校には英語を教えるツールがたくさんあります。しかし留学生のスキルアップのためには専門家が必要でしょう。僕らのもっている英語学習メソッドと彼らのもっている専門性とのコラボレーションで、新しい留学を提案していきたい」
そうした提案をさらに促進していくことで、社会と密接に絡み合った事柄を留学生が学んでくることも可能になる。また、そのフィードバックが日本にされれば、社会の変革も期待できるというのが平田氏の狙いだ。ただ学生を海外に送り出すだけでなく、その先に彼らの成長を見据えた新しい留学の在り方こそが、彼が考える留学4.0である。
「そもそも教育畑の人間ではない私ですが、年間二、三千人の学生を送り出すうちに、彼らの成長を見るようになったんです。私たちのビジネスとは英語力はもちろんですが、教育の機会を与えることだと実感しました。どういうものを提供すればいいか、それは100人いれば100通り。それぞれに合わせた留学プログラムを提供したいんです。企業として利益もあげるが、それ以上に子どもたちの成長を促したい。成長の機会を与え、掘り下げていくことが逆に当社の強みにもなるし、ビジネスの広がりをもたらすと思っています」