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肘井一也
HIJII KAZUYA

肘井一也

mk DUO合同会社 CEO

製品開発に対する意識改革を促すことで医療機器メーカーの海外進出をサポート。
「日本の中小医療機器メーカーが生き残っていくためには、請負業者が自社製品をもつぐらいの変革が必要だと思います。あえてその難題に挑みたいという顧客に対しては、そのチャレンジを全方位から後押ししたい。それが、私にとってのチャレンジでもあるのです」と、医療機器関連のコンサルタントを行うmk DUO合同会社の肘井一也CEOは語る。
肘井一也
画像はイメージです。
規制対応をはじめ、顧客の海外市場進出をサポート

医療機器業界は、医薬品と同様に、国によって認可をされたもののみが市場参入することができる規制ビジネスだ。メーカーは、顧客ニーズや技術シーズを考慮することに加えて法規制に対応することが求められるが、医療機器にまつわる規格は国や地域などによって多種多様で、それぞれ要求事項が異なる。そのため市場へ参入する際には、いかにスムーズにこれらの法規制をクリアしていくかが非常に重要だ。海外進出を考えている場合には、製品の開発段階でどの国に進出するのか計画を立て、当該国の要求を踏まえて設計、製造の段階に進むことが望ましい。

しかし日本の医療機器メーカーは、一部の大手を除いて中小規模の企業が多く、日本市場の経験は豊富にあるものの、海外市場のノウハウは往々にして乏しい。そうした企業にとって、mk DUOは頼れる存在だ。各国の規制や規格への対応を中心に、スタートアップから製品開発支援、品質マネジメント構築まで幅広くサポートを行う。

肘井氏は、かつてオリンパスで開発者として製品の企画から販売支援、設計変更対策までプロダクトライフサイクル全般を経験した後に、医療機器の規制を審査する米国系、欧州系の認証機関に在籍。医療機器を作る側、審査する側双方の視点からクライアントの相談に対応できる点が大きな強みだ。また、過去のキャリアで培ったグローバルなネットワークを駆使して、顧客が望む市場にいち早く進出し、浸透させるサポートも行うことができる。
「近年の日本の医療機器製品は、国内では通用するものの、海外では苦戦しています」と語る肘井氏。その原因には、「失われた30年」と表現される日本経済の停滞を招いた要因と重なるところがあるという。

「かつて多くの日本製品は、品質のよさで他国の追随を許しませんでしたが、アナログ技術からデジタル技術への変化により、品質の差別化が難しくなりました。製品のアイデアそのもので勝負する時代となった現代では、革新的な発想は欧米諸国が担い、品質が安定した後のモノづくりは新興国が担う図式となり、日本製品は立ち位置を失いつつあるように思われます。これは医療機器も同じで、このままでは多くの医療機器を輸入しなくてはいけない現状を変えられないと痛感しています」

肘井一也
日本企業が欠きがちな開発姿勢の醸成を促す

日本のメーカーの製品作りは、総じて技術的スペックばかりを追いかける傾向が強いと肘井氏は語る。とにかく高性能な製品さえ作れば売れるだろうというスタンスで、その性能を利用して医療にどう役立てるかという視点、つまりコンセプトが欠けている場合が多いという。
「海外、特に欧米先進国では『この機器を使ってこういうことができ、患者や使用する医師にこういうメリットがあります』という有効性や安全性をメーカー側が設定し、さらにそれらをメーカー自身がデータで証明することが規制でも要求されます。ですから日本のメーカーは、規制クリアと販売の両面で苦戦してしまうのです」

そこで肘井氏は、2020年のmk DUO設立以来、単なる道具を作るのではなく、医療の課題を解決するソリューションプロバイダーの視点をもったうえで、製品開発のきっかけを顧客であるメーカーと共に考えるという姿勢でコンサルティングに取り組んでいる。もちろん、これまでまったく世になかったような画期的な製品を生み出すことは難しいが、これまで欠けていた製品のアピールポイントの創生という部分を補うことで、日本企業にもまだ勝機は残されていると語る。

「高度な品質管理を実現できる点が日本企業の強み。現在注目を浴びている製品も、すべてが画期的な新技術を導入した医療機器ばかりではありません。現行製品の一部を改良して、使い勝手や安全性を向上させた医療機器もヒット商品となっています。この点を考慮すると、少し視点を変えた工夫をして、それを高度な品質管理によって達成できれば、チャンスは十分にあると考えています」

日本には医師の要望通りの機器を作ることに徹してきた企業も多く、冒頭の肘井氏の言葉のように大きな意識改革が必要だろう。それを成し遂げる手助けを行い、自走に至る企業を増やしていくことが、肘井氏が挑戦するミッションだ。

「私自身、メーカー在籍時は多くの失敗を繰り返しつつも、社内外の多くの方々に支えられて世の中に医療機器を出してきました。成功した製品よりも失敗した製品が多いと思いますが、手がけた製品は自分の分身のように愛着があります。僭越ではありますが、こうした自らの経験をお客様にシェアすることで、結果として多くの日本製の医療機器が世界に出るようになればうれしい限りです」

肘井一也

mk DUO合同会社 CEO
https://mk-duo.com
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。