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羽藤将志
HATO MASASHI

羽藤将志

株式会社Key of Life 代表取締役社長

キーエンスの元トップ営業が目指す、
資本主義の向こう側。
日本一給与が高いとして有名な株式会社キーエンス。その営業成績全国トップを獲った人物が独立し、資産運用会社として株式会社キーオブライフを設立した。その人物の名は羽藤将志氏。果たしてどんな熱血漢がビジネスを展開させているのかと思いきや、その軸は恩返しと循環という意外な事業展開だ。羽藤氏が見据える未来は、競争社会から抜け出した資本主義の先である。
羽藤将志
コツコツ手堅く、そしておもしろく

株式会社キーオブライフの代表取締役社長を務める羽藤氏をひと言で評するならば温厚、温和な人物。日本一の高給企業の元トップ営業というイメージからは遠い。その羽藤氏がキーエンスを退職したのが2013年。その翌日から独立し、資産運用という前職とは全く違う世界に飛び込んだ。現在は事業に直接投資する形で、キーエンス時代に関わりの深かった人たちを中心に資産運用ビジネスを行っている。

「海外の土地開発やリゾート開発などの事業を探してきて、顧客の方々に出資していただいています。特徴は2つありまして、私たち、そしてお客様にもおもしろいと思ってもらえる事業であること。もうひとつはお金の流れをすべてオープンにして事業を行うこと。多くが前職でお世話になった方々のお金ですから、大切に扱っています」

創業以来のテーマは「コツコツ手堅く、おもしろい」である。金融において「おもしろい」とは珍しいキーワードだが、いったいどんな意味なのだろうか。
「できるだけ純粋に私自身がワクワクすることですね。事業を選ぶ時も本当に自分の興味を追及できるもの、それに加えて価値のあること。私たちの興味と好奇心に価値を合わせたものがキーオブライフの事業です」

好奇心に駆られるまま自由に動く羽藤氏は、その過程で興味深い人たちと巡り合う。その中で事業の転機となる出会いがあった。一代で巨額の資産を築いた事業家をなんと自身の会社に加えてしまったのである。

「金融のスーパーマンみたいな方で、彼との出会いから会社の成長角度がぐっとあがりました。私たちよりノウハウも力もあって、もちろん資金も持っているし思想も深い。なんで会社に入ってくれたのか今でも不思議なんですが、お金ではないことは確かです。もしかすると、私を育成ゲームのキャラとして見ているのかもしれませんね(笑)」

羽藤将志
恩返しという名の循環型ビジネス

そう語る羽藤氏にはマンガの主人公のような純粋さと魅力を感じる。それは金融をただのお金としてとらえない、彼なりの新しい価値観からくるのかもしれない。

「社名のキーオブライフには金融のメッセージを入れていないんです。お金はあくまでベースづくり、本来の目的は人生の幸せの追求です。ただ、資本主義の中でいきなりはできないので、まず金融という手段を使って足元を固めていく。例えば私たちの顧客が仕事を引退されたとき、お金が安定的に入ればその方は好きなことに時間が使え、本来の自分のやるべきことに集中できる。目指すのはお金の多寡ではなく、いい人生の送り方なんです」

現在、キーオブライフは事業の9割が金融、残りの1割で先行投資をしているという。その先行投資こそが羽藤氏らが本当にやりたかった事業だという。

「世界のリゾートやお金の粋な使い方を提案するメディアとして『 ARKADEAR 』という雑誌を発行しています。プライベートジェットなどに置かれ多少ゴージャスな作りになっていますが、ポイントはお金ではなく幸せ。例えば『 ARKADEAR 』を奥様やご両親との旅行に使っていただくなど、幸せな人生のお手伝いができればと思っています」

羽藤氏の事業の根底にあるのは「恩返し」だという。キーエンス時代、独立後、これまで手を貸してくれた人たちに恩を返すことが自分の幸せだと語る。
「7年前、ブランドも実績もない私たちに出資してくれた方々、そこには信頼しかなかった。そういった方たちに手厚くお返ししていきたい。お金やまた違う形でも恩返ししたいんです。その気持ちがまわりまわっていろいろなところに循環していくことが夢です」

羽藤氏の言葉からは、無機質であるはずのお金にあえて気持ちを乗せようとの思いが感じられる。お金と気持ちを切り離そうとしてきたこの時代において、彼の理念は時代を逆行、いや先取りしているのかもしれない。

「資本主義、これが今後もずっと続くとは思えないんです。ではその次は何かというと信頼だと思うんです。私たちの事業はお金を積むのではなくて、信頼を積んでいくこと。ですから、仮に資本主義が潰れたとしても私たちはやっていけると信じています」

新型コロナパンデミックの後は経済やライフスタイルなどが、これまでとは一変しているはずだ。そのときに何が大切になってくるのか。それはキーオブライフ社のビジネス思想がひとつのヒントになるのかもしれない。

羽藤将志

株式会社Key of Life 代表取締役社長
http://www.kolj.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。