
検診受診率の向上を目指して
厚生労働省が推奨する大腸がん検診の対象年齢は40歳以上。加入する健康保険組合にもよるが、39歳以下なら未受診の人が多いだろう。大腸がんは進行すると血便や体重減少などの症状が現れるが、初期には自覚症状がほとんど見られない。
浜野氏は、「20〜30代でも大腸がんに罹患するリスクは少ないながらある。子育て世代が亡くなってしまうことがあれば、子どもの成長にも大きな影を落とす可能性が高くなります」と警鐘を鳴らす。そのため同院では、大腸がん検診受診率の向上と、検診で陽性となった場合の精密検診受診率の向上を目指している。
部位別のがん死亡率を見ると、女性の1位は大腸がんだ(男性は2位)。だが、2022年「国民生活基礎調査」によれば、全国40〜69歳の大腸がん検診の受診率は男性49.1%、女性42.8%と、女性のほうが少し低い。この要因のひとつに、就業率が関係しているのではないかと浜野氏は推察する。
「男性は女性に比べて就業率が高いので、職場で健康診断を受けることが多いと考えられます。いっぽう、女性が専業主婦や非正規雇用で職場の健康診断実施の対象とならない働き方をしている場合、どうしても受診の機会は減るでしょう。少子化が予想を超えて進む日本で、これ以上働き世代が苦境に立たされることがあってはなりません。子育て世代への働きかけとして、保育園等と協力した取り組みが必要だと考えています」
浜野氏は、保育園などを通じて保護者のがん検診を実施する計画を立てているという。
「若い世代を拾い上げるためには、国に頼るだけでなく、まずは自分から動かないと。この活動が少しずつ広がり、大きな波になることを期待しています。さらに、乳がんや子宮がん、卵巣がんといった女性特有のがんを早期発見できる活動も並行して進めたいです」
若年層の利便性を向上させるため、浜野胃腸科外科医院では若手スタッフの採用、ITを活用した予約システムの導入、土日の検査を実施。さらに同院では、がん検診に対する「痛い」「恥ずかしい」といったイメージや、患者が抱える過去のトラウマを払拭するため、眠ったまま検査を受けられる「痛みに配慮した大腸カメラ(大腸内視鏡)検査」を実施している。
鎮静剤を利用するため車での来院は不可だが、東葉高速線八千代緑が丘駅から徒歩1分という便利な立地のため、患者は特に不便を感じることなく、好評を博している。
そもそも浜野氏が、父である浜野頼隆氏が開業した同院で働きはじめたのは、「祖父の代から受け継ぐこの土地を活用したい」との思いからだった。
「東京メトロ東西線と相互直通運転する東葉高速鉄道が開通したのは1996年。それ以前は本当に田舎で、近くには牧場がありました。今は再開発により大型商業施設ができるなど、八千代市の中でベッドタウンとしてファミリー層に人気の地域になっています。この土地を、自分たち家族に限らず、他の方々にも利用してもらえるような形にして、より地域の活性化に寄与できる場所にしていけたらと思っています」