成長の源泉となった営業マンとしての視点
2019年に創業した株式会社オポジット。創業者の古林氏は、大学卒業後にベンチャー系の営業コンサルティング会社に入社し、優秀な成績を残すものの約1年で退社。学生時代から抱いていた教員になる夢を追うも、採用試験の壁を破れず、25歳で独立を決意。様々な仕事を経験する中で、施設などのクリーニングを行う現在の仕事に出会った。
「施設や住居の清掃を行うクリーニング業界は、当時から競合他社の多いレッドオーシャン。そうした業界で独立するにあたって考えたのが、いかに他者との差別化を図るかということでした」そう話す古林氏がまず徹底したのが、清掃前に顧客のニーズを細かに聞き取ること。
「職人気質のスタッフが、寡黙に仕事をこなすのが従来の清掃業の現場でした。しかし営業も経験していた私には、『清掃業もサービス業である』という考えがありました。職人としては満足のいく清掃ができたとしても、お客様に喜んでいただけないと意味がない。そこで、どの場所をどのくらい綺麗にして欲しいかといった要望を清掃前にお客様から聞き取り、そうしたゴールを明確にしたうえで、お客様やスタッフと共有することにしたのです」
さらには、ビジネスの世界では当然ともいえる気持ちのいい挨拶や、顧客とのコミュニケーションなど、清掃以外の細かな点にもこだわった。また、「クリーニングに関わるあらゆる相談をお受けしたい」と、コロナ禍で需要が急増した除菌や抗菌コーティングなどについても、いち早く専門家からノウハウを学び、顧客のニーズに対応。リフォーム会社や大手企業などの法人から個人まで、幅広い層の顧客からの信頼を深め、着実に事業を成長させてきた。東京、神奈川、千葉の全域から埼玉の一部にまで顧客を広げ、アルバイトを含め10名のスタッフを抱えるまでになった現在、古林氏が進めているのが、清掃業の単価を向上させるための様々な取り組みだ。
「例えば、リフォーム会社から依頼を受けることの多い引き渡し前物件のクリーニングでは、施工会社と我々のような清掃業者の後に、補修を行う業者さんが入ることが一般的です。その際に、自らの手で触って物件の隅々まで清掃を行う私たちが該当箇所をチェックすれば、次の作業を効率よく行うことができます。事前の細かなニーズの聞き取りなどに加えて、そうした現場での細かな気づきを付加価値に変えることで、今では相場の倍近い単価でのご依頼がいただけるようになりました」
さらに今後は、ホームページなどを通じてスタッフのプロフィールや技術などを紹介し、それぞれのスキルに見合った料金体系でのサービスの提供を構想する。
「特に個人宅などの場合、どんなスタッフが来るのかがわからないと不安があると思います。会社の情報だけでなく、スタッフの人となりやスキルをオープンにすることは、お客様の安心感にも繋がりますし、望まれる清掃のレベルに応じたサービスを相応の価格で提供することは、お客様の選択肢を広げることに加え、スタッフのモチベーション向上にも繋がるはずです」