リーダーや経営陣の変化が求められる
藤間氏は大手製薬会社をはじめとするグローバル企業で人事や事業企画の経験を積み、海外案件を中心にM&Aを10件以上実施。海外リーダーと協働してグローバル事業を推進してきた経験を通して痛感したのが、日本と海外におけるリーダーの違いだった。
そこで2023年4月に株式会社HR&Bを創業し、人事コンサルタント兼エグゼクティブコーチとして活動を開始。経営戦略を実行してイノベーションを生み出せる人財育成や組織風土の醸成を支援するほか、課題に直面する経営者や役員、経営トップ層に対する戦略アドバイザーとして、コーチングプログラムも提供している。
「日本のリーダーの多くはトップダウン型で、部下の意見に耳を傾けることは少ない。企業理念が浸透しないことを嘆く経営者や、部下の頑張り任せにしている管理職は多いですが、これは日本人の『以心伝心』の感性が影響していると思います。いっぽう、海外のリーダーはディスカッションを積極的に行い、進む方向性を明示し、互いに成長できる関係を育む。優秀なグローバルリーダーは人と組織を活性化し、環境変化に対応することに長けているのです」
IMD(国際経営開発研究所)の2023年版「国際競争力ランキング」において、日本の総合順位は64カ国中35位と過去最低を更新。前年の調査で行われた「マネジメント慣行」においては最下位で、日本のリーダーや経営陣がマネジメント慣行を変えるべき時期にあることを明確に示している。
では、藤間氏は具体的にどのようなコンサルティングを行うのか。たとえば、部下との関係性に悩んでいた執行役員にコーチングを行った際は、「フィードフォワード」という手法を提案した。これは過去の反省点ではなく未来に目を向けて「これからどうすべきか」を追求する考え方。上司は対話を通して、チームや部下自身が設定した目標に向かって行動できるようにサポートすることを目指す。
藤間氏は相談者に対し、部下には「どう思っているか教えてほしい」と質問し、返答後に「答えてくれてありがとう」と笑顔で言うことを推奨した。実行してみると、部下が今まで見たことのない笑顔で生き生きと働くようになった。その変化に衝撃を受けた相談者は「サンキュースマイルキャンペーン」という取り組みを始めたという。
「ずっとムスッとした顔をしている人には相談しづらく、欲しい答えに辿り着かないことが多い。組織を活性化したければトップ層自身が変わらなくてはいけません。毎日のちょっとした工夫や見直しが、イノベーションにつながります」
藤間氏は「人事の基軸」として「経営に資する戦略人事」と「人と組織の活性化」を挙げている。戦略人事とは経営資源の中のひとつである「ヒト」を最大限活用し、経営に貢献する戦略を実行できる組織をつくること。組織風土に応じて戦略を変更するか、戦略の実行が可能な組織風土を醸成するといった柔軟な対応が求められる。