Powered by Newsweek logo

餌打大輔
EUCHI DAISUKE

餌打大輔

株式会社みらいアーキテクト 代表取締役

家づくりを通じて伝えたいのは、
日本が誇る木造建築の素晴らしさ。
日本でも木造のビルが建てられるニュースが報じられるなど、世界的に注目を集めている木造建築。横浜市で新築住宅の建築・施工を主な事業とする株式会社みらいアーキテクトは、年間約400棟の建売住宅を供給している。代表取締役の餌打大輔氏は、日本の木造建築を伝統文化のような存在と捉え、大工技術を後世に残すための方法を模索している。
餌打大輔
画像はイメージです。
2種類の工法を使分け顧客のニーズに応える。

みらいアーキテクトは建売住宅を中心に、注文住宅やリフォームなどを手掛ける住宅建設会社である。木造建築に特化し、最大の特徴は在来工法と呼ばれる木造軸組工法と、北米生まれの木造枠組壁工法である2×4(ツーバイフォー)工法という2種類の工法に対応していることだろう。

「2種類の工法は、家をつくることに対する考え方や方法が異なるので、一般的に大工さんは在来工法または2×4工法のどちらかの技術しか身につけていません。なので、両方に対応できる工務店や住宅建設会社は決して多くはありません」
在来工法とは日本に古くからある伝統的な工法で、柱と梁で建物を支え、後から壁などを取り付けていく。開口部を大きくとることができ、間取りの自由度は高い。リフォームやイノベーションも比較的容易にできる。反面、工期が長く、工程が複雑ゆえ大工の技量が品質に現れる。

一方の2×4工法は4枚の壁と天井、床という6つの面で建物を支える工法のこと。モノコック構造ゆえ耐震性に優れ、密封性が高いため省エネ効果が得られる。柱や梁がないため空間はすっきりしている。しかし、面で支えているため大きな開口部を設けることが難しく、間取りの自由度は比較的低いといえる。

「お客様が大きな間取りや開口部を希望された場合、2×4工法しかできない会社だと、その要望にお応えすることができず、仕事自体がなくなる可能性があります。逆に在来工法ではできない間取りが、2×4工法では実現するというケースもあります。みらいアーキテクトなら選択肢を用意できるだけでなく、両方の工法を熟知しているからこそ納得していただけるプランを提案できることが一番の強みです」
同社の設立は2018年とまだ若いが、餌打氏と木造建築との出会いは高校時代まで遡る。小さい頃から部屋の模様替えが大好きで、中学生の頃に将来の進路として思い浮かんだのがデザインやインテリアの分野だった。その後、手に職を付けるために神奈川工業高校の建築科へ進学。授業で木造建築の図面を引いたり、模型をつくったりするうちにその面白さにのめり込んでしまった。卒業後は横浜市で注文住宅を手掛ける会社に就職した。

「最初に現場監督を任されたときのことは忘れられません。お客様に引き渡す前日の夜、キッチンが使えるか、照明が点灯するかといった最終チェックを終え、外に出て家をじっくり見ました。周囲が暗い中、完成したばかりの家に煌々と灯りがついていた様子を眺めていると、感動してしまい自然に涙があふれてしまったのです。その衝撃が大きすぎで、今でも当時のことを思い出すと泣きそうになります」
その後、餌打氏は何度か転職を繰り返し、現場監督としてのキャリアを積み上げていった。中国・上海でマンションや店舗をつくる仕事にも携わり、2008年に株式会社Re.Co.,Ltdを設立。しかし、単発の現場監督やリフォームの仕事を受注する日々が続いた。転機が訪れたのは、分譲住宅事業を手掛ける会社から業務委託という形で仕事を引き受けたときだった。しばらくすると、その会社が業務から手を引くことをきっかけに、建売住宅の建設を一手に引き受ける話が舞い込んできた。

「建売に進出するとなると、初めに数十億円ものまとまった資金が必要になります。しかし、このチャンスを逃したら、住宅建設会社を一から立ち上げる経験は今後一生来ないだろうと。資金の問題など数々のハードルはあるものの、これは将来の糧になるだろうと腹を括ることにしました。Re.Co.,Ltdの“Re.”はリフォームの意味として付けたものだったので、2018年に新しい会社としてみらいアーキテクトを設立しました」

餌打大輔
今必要なのは職人を育てる仕組みづくり。

建売住宅の建築・施工から始まったみらいアーキテクトは、手掛けた住宅の品質のよさが評判を呼び、注文住宅の受注件数も増えていった。順風満帆に見える同社だが、日本の木造建築業界における課題は山積みで、その最たるものが職人不足と技術の伝承が進んでいないことだと指摘する。

「職人が高齢化を迎え、どんどん減少しているのに若い職人を育成できていない。そして、木造住宅のつくり方がプラモデル化し、効率よくつくられるようになってきたことで大工さんの技術も低下しています。こうした問題は自分の会社だけ対応できても根本的な解決にはならず、将来的には業界全体で職人が何百人という単位で不足するはずです」
そこで餌打氏が構想しているのが、いくつかの会社と連携して出資し、職人の学校のような仕組みをつくることだという。若い人達には職人による授業を受けて技術を身につけてもらい、給料もしっかり払う。そして、2年ほど経ったら全社共通の職人として活躍してもらう。そんなことが実現できないかと思案するようになった。

「日本の木造建築は伝統工芸だと思っていて、例えば宮大工さん達は今も昔も変わらない技術で建造物をつくっています。時代とともに住宅の工法が効率化されていくのは仕方がないにしても、一般的な木造住宅における伝統的な技術も残しておきたい。仮に後継者がいなくなっても、その技術を復活できる説明書のようなものを残すことはできるはず。海外では木造建築自体が見直されていて、だからこそウッドショックが起きました。木造ってすごいんだってことを世の中にもっと広めていきたいと思います」

誰よりも木造建築に魅了されてきた餌打氏が、当面の目標としているのは横浜で一番の会社になること。一番の意味は、売上でも棟数でもなく、顧客満足度だと言い切る。家を建てたいと思った人が誰かに相談したときに、みらいアーキテクトが推薦される、そんな会社にしていくことを目指している。

「品質のよさとは、実際に住んでいる人たちによって伝えられるものなので、お客様から“ああいい家だね”って評価していただけるのが一番嬉しい。その品質をキープしたまま、どれだけ棟数を伸ばしていけるかが大事で、棟数を伸ばすことができれば必然的に売上も上がっていきます。それが5年後なのか10年後なのか分かりませんが、お客様に喜んでいただける家をつくりたいという気持ちが変わることはありません」

餌打大輔

株式会社みらいアーキテクト 代表取締役
https://www.mirai-a.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。