
売るための基礎やノウハウを共有する
高校卒業後は飲食業の道に進み、25歳のときに独立を視野に入れ、勤めていた居酒屋を退社。「少ない元手で始められるフランチャイズの開業制度を利用して、オーナーとしてキムチの移動販売をスタートさせたのが催事販売事業に関わるきっかけでした」と、有牛氏は当時を振り返る。
飲食業で培った接客や販売のノウハウ、持ち前の探究心でどんどん売上を伸ばすうち、有牛氏が気づいたのが業界に根づく古い慣習だった。
「これまでの催事販売は1店舗1オーナーという考え方がベースで、そのオーナーの方が昔ながらの雰囲気で商材を販売されているケースがほとんどでした。しかし、それだと売上にも限界がありますし、オーナー自身も高齢化するので持続可能なビジネスになりません」
そこで有牛氏は、自らのノウハウで教育した若いアルバイトを積極的に起用し、複数の店舗を展開。そしてビジネスが軌道に乗った2018年には、さらなる事業の拡大を目指して株式会社COW COW JAPANを設立した。
同社が主力とする催事販売事業では、自社の店舗運営に加え、フランチャイジーと個人オーナーのマッチング事業などを展開。その双方で有牛氏が重視するのが、“基礎”についての教育だ。
「私自身、色々なフランチャイジーや個人販売をされている方を見てきましたが、そのなかにはそもそもの接客の仕方や売り場の作り方など、基礎的な部分が欠けている人が驚くほど多くおられました。ある意味、簡単に独立できる催事販売業の世界では、基礎を教えてもらえる場がほとんどありません。そこで当社では、実際の現場に立つ前に約2カ月の研修を受けてもらい、販売や仕入れの基本や売り場の作り方など、催事販売のノウハウを徹底的に学んでもらっています」
有牛氏が基礎教育にこだわる理由は、基礎がなければ売上が上がらないのはもちろん、売上が落ちたときの改善点が見つけられないからだ。
「多くのビジネスもそうですが特に催事販売業では常に改善することが大切で、幟の位置やお客様からの商品の見え方を少し変えるだけで売上が大きく変わります。とはいえ、そうした軌道修正ができるのも基礎を理解できているからこそ。特に売上が落ち込んだときにはまず原点に立ち返ることが重要で、そのときに立ち返る原点こそ我々の言う基礎なのです」