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日本の不用品を世界規模でリサイクル
建設業をはじめとする様々な職を経験した後、現在の拠点である愛知県で産業廃棄物関連の会社に就職。そこで積み上げた経験に加え、仕事を通して知り合った大手リサイクル会社社長の後押しによって独立し、2015年にゼロプラス株式会社を設立した荒津氏。会社を設立した当時、荒津氏が自らの会社の名に込めたのは、「ゼロの価値をプラスにできる会社に」という想いだったという。
故人が大切に使用してきた家財道具から企業に眠る在庫品まで、日本で大量に出る不用品がフィリピンで“価値あるモノ”として取引される――。環境破壊や地球温暖化の影響によりエコビジネスの注目度が益々高まるなか、ゼロプラスの子会社が主催する「フジジャパンオークション」は、その成功例としてこれまで多くのメディアで紹介されてきた。
「日本で使われてきたモノをただ廃棄するのではなく、フィリピンの人たちに購入して使ってもらうことで、日本での遺品整理や廃品回収のコストを下げることができる。フィリピンで成功を収めることができた理由の一つは、オークション実績をすべて公開するなど、サプライヤー様に対する誠実さを重視したことだと思います。あとは私自身というよりも、現地の優秀なパートナーのおかげでしかありません」
荒津氏は謙遜するが、同オークションは数々の失敗例を含む海外オークションなどの事例を参考に、日本の廃品回収業者やフィリピンの人々など、関わるすべての人にメリットが出るような仕組みを荒津氏がモデル化し、現地に住む日本人とフィリピン人のパートナーに運営を託したものだ。
フジジャパンオークションは2017年にスタートし、いまや現地で大人気のオークション会場となった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大以降は、船便の激減などによって海上運賃が2倍以上に高騰。特に近年、海外事業につきまとう不確実性はより大きなものになっているが、「フィリピンの人々への貢献やエコロジー的な観点からも、フィリピンでのオークションは、今後もできる限り続けていきたいと考えています」と荒津氏は話す。
業界のイメージと価値向上を目指して
グローバルなリサイクルシステムの構築に成功した荒津氏が、次に目指すのは日本の遺品整理業界のイメージアップだ。
「そもそも遺品整理は、お客様に感謝していただける素晴らしい仕事です。しかし現状は、全国的な相場がないため、不当に高額な請求をする業者がいたり、逆に不法投棄を前提にして極端に料金を下げている業者がいたりもします。また、業者の質がバラバラなうえ、まとまった情報もないのでお客様が優良な業者を見つけることが難しく、結果として多くの人がもつ遺品整理業者のイメージは必ずしも良くありません。そこで、志の高い同業者が集う業界団体を組織し、価格帯やサービスの質の均一化などに向けた取り組みや情報発信を行うなど、業界を底上げするための活動を行っています」
2016年に設立され、全国の遺品整理業者9社が加盟する一般社団法人『心結』では、忙しい本業の傍ら副理事長を務め、遺品整理に関するセミナーなども開催。“空き家問題”が全国で顕在化する最近では、遺品整理から空き家の解体、不動産の売買までを、提携業者と連携してワンストップで行う、遺品整理業の新しいスタイルの構築にも成功している。
「私たちが実現したいのは、引っ越しなどと同じように、“遺品整理は業者に頼むのが当たり前”という未来。日々の仕事や活動を通じ、まだまだ知名度が高くない遺品整理という仕事に光を当て、従事する人たちが誇りをもてるメジャーなビジネスに育てていきたいと考えています」
さらに昨年の9月には、障がい者のためのA型就労支援施設「E-work」も創設。リサイクル品の清掃や仕分けなどの軽作業を業務内容とする施設で、すでに20名以上の雇用の創出を実現している。
「施設運営のきっかけは自分の子どもに障がいがあったから。様々な障がいを理由に一般の会社で働けない人はたくさんいますが、そうした人でも働ける場所や仕事を与えてあげれば、労働を通じて価値を生み出すことができます。これまでもフィリピンでは定期的な貧困層への食糧支援などを行ってきましたが、今後は日本での社会貢献活動にも注力していきたい。そうした一つひとつの活動によって関わる人々を幸せにし、結果的に業界のイメージアップにもつなげられればと思っているんです」
今、世界が必要とする“もったいない”の精神を、まさに体現するゼロプラス。同社が切り拓く業界の未来に大注目したい。