Powered by Newsweek logo

宅間俊典
TAKUMA TOSHINORI

宅間俊典

株式会社 大勝物産 代表取締役社長

長年外食産業に身を置き養われた経営感覚で、グルメ激戦区を勝ち抜く
愛知県名古屋市は「名古屋めし」と呼ばれる独自の食文化が繁栄しているエリアだ。それ以外にもさまざまなジャンルの飲食店がひしめくこの街で、長年にわたり外食産業に携わってきた経営者の足跡をたどりつつ、そのビジョンに迫る。
宅間俊典
積極的に現場へ足を運ぶことで、迅速に課題を発見し解決する

名古屋を中心とした愛知県一円で外食および中食事業を展開する株式会社大勝物産は、「食を通じて、相手の立場に立ち考えて行動出来る集団。故に必要とされる人間であり、必要とされる企業となる」ことを企業理念に掲げている。
「この仕事は人と人のつながりが重要。自分が逆の立場だったらどう思うかを常に考える。相手がお客様であっても、従業員であっても、誰であっても同じことです。私自身も常に心がけるようにしています」
そう語るのは同社代表取締役社長の宅間俊典氏だ。理念には同氏の思いが集約されている。

宅間氏は大学卒業後に飲食チェーン店を全国展開する企業に入社し、そこで約17年のキャリアを積んだ。一スタッフからはじまり、店長、エリアマネージャー、営業本部長、執行役員まで上り詰めた。

はたからは順調に出世コースを歩んでいるように見える宅間氏のキャリアだが、当の本人には少なからず行き詰まりを感じるようなことがあったのだという。
「長く同じ会社にいると、世の中の流れもそうですが、店舗の中で起こることなども、この先どうなるかというのがある程度、経験則で見えてくる。このままいけば状況が悪くなるだろうということがあったときに、どうしても放っておけなくて、自分が先に口や手を出してしまっていたんです。でもそれだといつまで経っても部下たちは自分で気付くことができない。このままではお互いにとって良くないと思いました」

そうして宅間氏は大勝物産に入社した。
「当初は社内制度も整っておらず、既存の寿司店や和食居酒屋などの各店舗ではPL(損益計算書)もつけていないという状態。そうした知識を一から教えていって経営を健全化させるところからのスタートでしたね。職人気質の人が多く、最初の1年半はとにかく従業員との関係性作りに注力しました」
なかでも特に宅間氏が力を入れて取り組んだのは、とにかく現場に足を運ぶことだった。
「各店舗が今どんな状況でどんな問題を抱えているのか、それに対してどう思っているのか、私が現場に行って一緒に確認しながらやっていけば、すぐに状況を変えることができる。それを実践していったことで少しずつ従業員も心を開いてくれるようになりました」

宅間俊典
大事なことは相手の立場に立ち、自分で考えて行動すること

宅間氏が現場で迅速な経営判断をしたなかで、いかにも痛快な事例がある。新店舗の立ち上げからわずか4日で業態を変更したというものだ。
「2011年の東日本大震災以降、消費者の動向が変わり、価格の安さではなく、より上質のもの、専門性が高いものが求められるようになった。もとより名古屋はグルメ激戦区で独自性を打ち出す店が多い。そこで勝ち抜いていくためには、お客様に『今日はあの店のあの料理を食べに行こう』と思ってもらえる店にする必要がありました」
そこで宅間氏がスタッフとともに一から立ち上げたのが、新鮮な魚介類をその場で焼いて食べられる屋内型のバーベキュー施設「名古屋みなと漁港」だ。

成功するであろうと見込んだ根拠はあった。愛知県の港町で浜焼きバーベキューが大人気を博していた。同様に入場料を支払って好きな魚介類を購入するシステムにした。
「しかしそれはあくまで海のそばで食べられるからこその魅力だったということが、お客様からのアンケートでわかりました。屋内の飲食店としては少し値が高すぎた。それは私が実際に友人を連れて利用してみたことで確信に変わった。すぐに店長はじめスタッフと話し合い、定額食べ放題の店に転向することを決めました」
それがオープンしてわずか4日目のことだった。宅間氏が現場に足を踏み入れ、スタッフとの意思疎通が取れており、客側の立場に立って考えたからこそできた決断だった。

その結果、転向後1ヵ月で予約や問い合わせの電話が殺到するほどの大盛況となった。利用者の反応も上々だった。満席になった店内を見て、店長と固い握手を交わした。
「当時、店長とは1日17時間くらい一緒にいたんです。朝、出勤して、仕事をして、夜も一緒に食べながら話をして、という日々を過ごしてきたので、とても感慨深い思いになった。チームじゃないと味わえない。本当にやりがいのある、いい仕事だと感じましたね」

宅間氏は今後の展開について、スタッフの成長に合わせてゆっくりと進めていきたいと話す。
「前の会社のときもそうだったのですが、ヒットしているからといって闇雲に店を増やして人員を配置すると、既存店に負担がかかるのです。店の展開と人の成長は同じペースでなければならないと思っています」

宅間氏はさらに前職での苦い経験を現在の人材育成に生かしている。
「人の成長は促すものではない。やはり時間をかけて、自分で気付くようにすることが大事なのです。ただ『どうしたらいいですか?』と聞いてくるのはダメ。『私はこう思うので、これでいいですか?』ならOK。ちゃんと自分で考えてやったことであれば、失敗してもいいんです。事後報告になってもいい。お客様とのやりとりは常にライブで、臨機応変な対応が求められます。そのときに、自分で考えて行動できるというのは、店にとっても会社にとっても大きな力となります。スタッフ本人にとっても仕事がより楽しくなると思います」

宅間氏がもつ経営感覚は、長年外食産業に身を置き、経験を重ねてきたからこそ身につけられているものだ。この感覚と徹底した現場主義、スタッフの力を得て、グルメ激戦区の名古屋で勝ち抜く。

宅間俊典

株式会社 大勝物産 代表取締役社長
https://daishou-bussan.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。