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新開強
SHINGAI TSUYOSHI

新開強

株式会社プラスワンインターナショナル 代表取締役

デザインの魅力を広めるという原点に帰って、新たな市場を掘り起こす。
Tシャツをはじめとするオーダーメードプリント事業において業界シェアトップに成長した株式会社プラスワンインターナショナル。創業20年を超え、2020年からを“第二創業”と位置づける、代表取締役の新開強氏が目指すものとは。
新開強
事業のきっかけは、ラーメン店のTシャツ制作

「起業の原点はデザイン。デザインこそが主力サービスという原点に回帰します」と語る、株式会社プラスワンインターナショナル代表取締役の新開強氏。1998年から故郷の香川県高松市でセレクトショップを経営していた同氏が、アメカジブームの衰退による窮地から脱したきっかけは、2002年に地元ラーメン店の社長に依頼され、アメリカ留学時に身に付けたグラフィックデザインのスキルを生かして店のスタッフTシャツを制作したことだった。

Tシャツなどのオリジナル商品を制作するサービスを始めた新開氏は、2004年に自力でECサイトを構築してネット通販を開始。オリジナルアイテムを制作する業者はそれ以前からあったが、ネット販売を行う店は当時まだ少なかった。そこでネット広告を積極的に打つことで認知度を高め、市場を大きく開拓していった。

そして2011年からは店頭でデザインの相談を行えるリアル店舗を全国に展開。ネットとリアルの相乗効果でさらにシェアを拡大した。
「ECサイトに問い合わせしてきた方のうち、成約に至る割合は約35%。当社はデザイナーが直接お客さまからデザインの要望を聞くことで、納得のいくデザインに仕上げられるのが特徴ですが、ネットや電話を介したやりとりではデザインのニュアンスなどがどうしても伝わりづらい場合があります。そういったケースを含めて一定層は対面の方がいいと気づいて実店舗を展開しました。実際、対面販売では成約率はほぼ100%です」

さらにはTシャツなどのウェアだけでなく、タオルやバッグからスマートフォンケースに至るまで、顧客の要望に応じてさまざまなアイテムに対応できる体制を整え、売上約30億の業界No.1企業に成長した。しかし、新開氏は現状に満足せず、むしろ危機感を抱いているという。
「当社の売り上げの約半分を占めるTシャツは、どこの業者も扱っているTシャツメーカー自体はほとんど一緒なので、モノとしては同じです。そうなると価格競争になりますが、それもこれ以上は値下げできないところまできています。それではどこで差別化するのか?」
それを考えた結果に思い至ったのが、“感動のデザインを身近に”というスローガンのもと、デザインの魅力を広めるという原点に回帰することだった。

新開強
誰でも気軽にデザイン体験を楽しめる新コンセプトショップ

現在、プラスワンインターナショナルの顧客のうち、約9割の人がオーダー時にあらかじめ何らかのデザイン素材を用意しているという。「残りの1割のお客様は、これといったイメージがない方ですが、そこをサポートして、デザインするプロセスを楽しんでいただけるようにします。さらには、現時点でオリジナルアイテムをつくろうとも思っていない潜在層をターゲットとして開拓していきたいと考えています」と語る新開氏。そのために2019年12月にオープンしたのが、新形態のコンセプトショップ「PRINTÖNE(プリントーン)」だ。

渋谷センター街のこの路面店は、地上2階、地下1階の3フロアで構成されている。2階には、デザイン未経験のユーザーがイメージを膨らませやすいようにデザイン関連書籍やスタンプ素材などを用意するとともに、常駐デザイナーが制作をサポート。デザインが完成したら、地下1階のプリントラボですぐアイテムを作成することも可能だ。アイテムにもよるが、最短5分ほどで完成品を手にすることができる。またこのプリントラボでは、デザイン制作を体験できるワークショップも開催される。そして1階は物販フロアで、クリエイター集団やクラフト作家などとコラボレーションしたアイテムを販売する。また個人でも、自分が作ったオリジナルアイテムを売りたくなったら、審査のうえで店頭販売を可能にする予定だという。

「全体的に見れば、まだデザインすることと無縁の方は圧倒的に多い。でも、そういった人でもここに立ち寄れば、誰でもオンリーワンの、しかもハイクオリティなアイテムをデザインする楽しみを体験できる店にしたいですね」
今後は同じ形態の店を増やし、美大出身者などデザイン能力のある人材を積極的に採用していきたいと新開氏は語る。その一方で、デザインを印刷データ化する作業は海外に委託している。
「2017年からミャンマーの日本企業と組んで、向こうでデータ処理を行っています。通常のデータ処理はすべて移すことができました。第一の理由はコストダウンですが、それだけでなく、人材育成もしたい。2020年3月には現地にデザイン学校を設立する予定です」

ビジョンを練り直し、まとめて打ち出した2019年は、創業20年を迎え、ちょうど新しいことにチャレンジする時期だったという新開氏。
「社員と目的・テンションを共有して、成功したときの高揚感がたまらない。当社はまだまだ過渡期。これからも仲間を増やしてきたいですね」
2020年からを“第二創業”と位置づける新開氏の挑戦にこれからも目が離せない。

新開強

株式会社プラスワンインターナショナル 代表取締役
https://www.p1-intl.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。