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大塚訓
OTSUKA SATOSHI

大塚訓

オークン社労士事務所 代表

社労士による新たな経営コンサル
中小企業のホワイト化を促す助成金の活用
「社労士」という職業は、多くの人にとって「経営者が雇用や労務管理の相談をする」または「労働者が労働や社会保険、年金の相談をする」専門家だろう。これらに加え、特に中小企業にとって重要となる社労士の業務が、国や自治体が設けている助成金の活用サポートだ。オークン社労士事務所は、助成金コンサルを追求し、総合的な経営コンサルに取り組みつつあるという。
大塚訓
経営者と労働者、双方をつなぐ
労働と社会保障のプロフェッショナルの目線

企業の成長に必要とされる「人、モノ、金」。そのうち特に「人材」の専門家として知られる社会保険労務士。「社労士」または「労務士」の通称で一般に親しまれ、労働及び社会保険に関する専門知識をもって書類作成や申請を代行し、就労者と経営者双方のサポートを行う。国家資格を必要とする、いわゆる8士業の中でも資格試験の難易度が高く、多岐にわたる厳しい試験の合格率は毎年10%にも満たないという。

しかし、社労士には定年制度がないため、厚生労働省によれば、全国社会保険労務士会連合会に登録している社労士の有資格者数は2019年時点で4万人を超えている。さらに、その4分の1相当が関東近郊へ在籍し、東京一極集中が進む。競争の厳しさから、狭き門をくぐり抜けて資格を取得しても、独立・開業はせずに企業内で「勤務社労士」として働く人も多い。そのような環境下で「開業社労士」を選択し、開業から12年を超えてなお順調に業務を拡大しているのが、千葉県船橋市にあるオークン社労士事務所だ。代表の大塚訓氏は、独立・開業を選んだ経緯について、下積み時代の経験を語る。

「学生時代から社会保障に興味をもち、社労士を目指してきました。開業当初は金無し、コネ無しだったので、労働基準監督署で総合労働相談員として2年間業務に当たりました。通算で1500件ほどの相談をお受けしたのですが、結果的にこの経験が後の財産になったと感じます。例えば地域貢献の一環として、地元の夏祭りに『出張なんでも相談室』を開き、お爺ちゃんお婆ちゃんの年金の疑問や不安を伺うこともありました。労働者と経営者の両側の目線をもつ社労士として、人のつながりの大切さや、根底にもつべき愛情や真心について学ぶことができたと思います」

社労士が働く人に関する問題解決のパートナーとしての役割を全うすれば、それが会社を守ること、経営者を守ることにもつながる。そのために膝を突き合わせた対話を重視し、人との縁やつながりを大切にしてきたという大塚氏。「居酒屋でお酒を酌み交わすような、気軽な異業種交流会に積極的に参加してきました」と、昔ながらの交流機会を得る一方で、大きな時代の変化にも注目する。近年、行政手続きを電子申請に原則統一するデジタルファースト法が可決し、大企業の行政手続きに対する電子申請の義務化方針も示された。現状では義務化の対象となるのは社会保険の一部とされているが、今後の対象拡大や義務化は大いにあり得るという。書類作成や提出がデジタル化され、手続きが簡単になれば、わざわざそうした業務を社労士へ依頼する必要がなくなるのだ。

大塚訓
助成金の活用指導をきっかけに
決算書を読み解く総合コンサルタントへ

毎年更新される法律や、時代に合わせた知識のキャッチアップを行うのがプロの社労士だ。しかし単純な知識量だけでは、インターネット全盛の時代に必要とされ続けるのは難しい。そこで大塚氏は、国や行政が提供する中小企業向け助成金へ着目した。制度の活用指導や、手続きの代行業務を通して、どのような事業の継続・発展にも欠かせない「人材育成」、「雇用調整・労働移動」、「高齢化」といった社会的課題解決に取り組み始めたのだ。

「中小企業の事業活動を応援する助成金は大変数が多く、例えば東京都の中小企業振興公社が行っている助成金事業だけでも30種以上あります。そうした制度を知った上で申請しないのなら良いのですが、知らない、または対象になるのか分からない、手続きが難しいから見送ってしまうという例が多いのが実情です。助成金があれば、予算を使うべきところにしっかりとお金をかける判断がしやすくなったり、雇用の促進ができたりと良い効果が沢山あります」

具体例として、いわゆる非正規雇用の労働者の企業内キャリアアップを促進する「キャリアアップ助成金」の導入事例を挙げる。パートタイマーの従業員を4人正規雇用に転換し、実習訓練と健康診断を受けてもらった。通常であれば企業側から多くの投資が必要になるが、助成金を複数コース申請し、360万円が適用されたという。助成金の活用で、従業員の働きやすい環境作りと、雇用関連の経費削減が同時に可能になるのだ。また、助成金の募集要項を満たすためには、ブラックな環境では必然的に申請が不可能になる。助成金を申請できる環境に整えることで、会社のホワイト化が促されるという効果もある。

助成金に関する様々な知識と手続きに特化したことで、依頼元は全国に広がったという。大塚氏は「企業の顧問社労士でも助成金に関する知識に欠けることがあり、助成金コンサルが可能な社労士をもっと増やす必要があると考えています」と語る。高い需要により広く応えるため、現在は同業者や希望者に向けたセミナーを頻繁に行い、研修モデルの確立を目指している。さらに、専門書の執筆や、通称「オークン式提案書」と呼ぶ形式の提案書類作成も進行中だ。

知識の共有と業界の活性化。これだけでも専門性の高い社労士として充分な働きに見えるが、大塚氏はより新しいチャレンジに挑んでいる。法令改正によって、特に雇用促進に関する助成金制度に変化があったため「これまでと違い、新たな雇用が企業の業績にどのような影響を与えたのかが問われるようになりました」と言うのだ。つまり、助成金の申請のために決算書を読む必要がある。決算書から人件費や売上の流れを読み解けば、助成金コンサルと経営コンサルを両立できる。さらに大塚氏は、経営数字を使って経営者の本業の発展に貢献する「キャッシュフローコーチ(R)」の認定を取得。3種の業務の包括的な提供を開始したのだ。「自分の視野が広がり、取り組みが拡大すれば、それが社会貢献につながると考えています」と笑顔を見せる大塚氏。社労士の枠組みを超えて、これからの時代に必要とされる問題解決のパートナーとしての姿勢を示し続けてくれることだろう。

大塚訓

オークン社労士事務所 代表
https://www.orkoon2784.com/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。