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花房雄治
HANAFUSA YUJI

花房雄治

のぞみ記念 下田循環器・腎臓クリニック 院長

充実した治療で、困窮する地方医療の現状を打開する存在を目指す。
施設および人手の不足が深刻な問題となっている地域医療。この現状に、地方のいちクリニックとしてどう立ち向かうのか。伊豆下田にあるのぞみ記念 下田循環器・腎臓クリニック院長の花房雄治氏の挑戦をご紹介しよう。
花房雄治
人手不足に悩む地方医療の現状を広く伝えたい

伊豆半島南部、静岡県下田市にある「のぞみ記念 下田循環器・腎臓クリニック」。この名称になったのは2012年からだが、前身となる横山クリニック時代の2005年から院長を務めているのが花房雄治氏である。

花房氏は子どもの頃から医師に憧れ、大学卒業後は心臓外科医として大病院で順調にキャリアを積んでいた。しかし連帯保証人となっていた父親の会社の経営が行き詰まったことで、その職を辞さざるを得なくなる。
「莫大な借金を返済するためには、より報酬のよい所で働かなければ到底無理で、転職活動をするなかで巡り合ったのがこのクリニックの院長職でした。伊豆には学生時代よく遊びに来ていて親しみがありましたし、いつかは田舎で暮らしたいと思っていたので、それが前倒しになったと思って、心機一転ここでやっていこうと決めたのです」

それまでベッド数1,000床以上の医療施設で働いてきた花房氏にとって、当時わずか20床のクリニックの環境は戸惑うことばかりだったという。そして勤めるうちに、地域医療のさまざまな問題に直面することになる。
「私が下田に来てから15年の間に、150以上の医療機関が閉鎖しました。現在下田には総合病院はひとつしかなく、そこも人員不足で受け入れは限られています。患者の容態によっては50km離れた病院に運ばなければなりませんが、下田からは下道で天城越えしていかなければなりません。伊豆縦貫道が下田まで開通すれば多少は状況が改善するとはいえ、このままでは助かる命も助かりません」

問題の根本にあるのは、人手不足だ。医師、看護士、技師、療法士、事務すべて足りないが、特に看護士不足は都市部ですら深刻な問題となっている。近年、病院以外に介護施設など、看護士の有資格者が必要とされる場が増えていること、女性が多いため結婚や出産などを機に離職しがちであることなど、さまざまな要因がある。
「下田にはそもそも看護師の資格を有する人自体が少ない。看護学校は現在1施設のみです。学校を誘致してもらえるように市長に直訴もしました」
行政への働きかけの他、機会があればメディアに積極的に出て、地方医療の困窮の実態を広く訴えるように努めているという。

花房雄治
最新の専門医療を提供し、地元に貢献しつつ人材を育成

地方の医療従事者を増やすには、彼らにとって魅力的な仕事環境を整えることも重要だ。2012年に満を持して立ち上げられた下田循環器・腎臓クリニックには、静岡県一、さらには全国一のクリニックとして知名度を上げることで、下田に医療従事者を呼び込みたいという花房氏の強い願いが込められている。

同クリニックは、日本透析学会の他、日本循環器学会や日本脈管学会の認定関連施設に認定されている。腎臓と循環器という組み合わせは全国的にも珍しいが、その理由はもともと花房氏が循環器系を得意分野としていたからということだけではない。日本透析医学会の『わが国の慢性透析療法の現況』によれば、透析患者の死亡原因は1983年から心不全が最も多く、2017年時では全体の約3割に及ぶ。透析の患者は合併症として心臓疾患を抱える人が多く、それにしっかり対処できることは大きなメリットとなるのだ。

ひとつのクリニックで腎疾患治療のすべてが完結できることは、地元の人々に大きく貢献できるとともに、働くスタッフに貴重な経験を積む機会を与えることにもつながる。
「他の病院の方から『下田でよくこれだけのことをやっていますね』とよく言われます。最新の専門医療を提供することで、ただ働くだけでなく、専門医などの資格も取れます。都市部の大病院での経験も大切ですが、地域の診療でもスキルを生かしたり、スキルアップすることができると示したいのです」

同クリニックでは、冠動脈造影が行える64列マルチスライスCTなど最新の機器も積極的に導入している。しかしそうしたハード面以上に重要視しているのがソフト面だと花房氏は語る。
「大切なのは人。病院では、患者さんはスタッフの対応に不満を抱きがち。特に透析のように拘束時間が長い分野はなおさらです。受付や看護士の態度、言葉遣いに気を配るようにしていますし、そのためにはスタッフ同士でも『挨拶をきちんとする』『感謝の気持ちをきちんと伝える』といったことを大切にする雰囲気づくりを心がけています。スタッフ間の和が乱れていると、その空気が患者さんにも伝わってしまいますから。その結果、利用者の方々からは居心地のよさ、ホスピタリティを高く評価いただいています」
2020年8月からはクリニックの院長職だけでなく経営も引き継ぐ花房氏。地方のクリニックでも充実した診療が行えることを示すことで、地方医療の現状を打開するきっかけになりたいと語る氏の挑戦はこれからも続いていく。

花房雄治

のぞみ記念 下田循環器・腎臓クリニック 院長
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※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。