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モノを生産するわけではない商社は人が財産。
同社の主力事業は、世界各国で築いてきた独自のネットワークを活かして、半導体および電子部品を調達し、国内の企業へ供給すること。これらの商品は自動車や医療機器、工作機械、アミューズメント機器、半導体製造装置など、さまざま工業製品に使われている。まだ設立6年の若い会社であるにも関わらず、昨期は100億円まであと一歩という売上を達成した。
「私たちは生産工場ではなく、新製品を開発しているわけでもありません。最大の武器は人であり、働きやすい環境を整備することで従業員の幸福度を高めることが大切です。例えば、弊社ではコロナ禍以前からテレワークを実施。全社会議はほとんどしたことがなく、必要に応じて私が話したいと思った従業員と会議を行っています」
雇用形態についても営業職の場合は従業員の希望を聞き、正社員や固定給+インセンティブ、業務委託契約など、幅広い働き方を用意。現在、8名の正社員を含め約20名の従業員が在籍している。給与体系も一般的な価値観に縛られず、個人の売上に応じて対価が支払われるため、若くても高収入が得られる可能性のある仕組みになっている。
「従業員は人生を弊社に賭けているわけですから、私も命がけでその人の人生を守らなければいけない。この会社で働いてよかったと思える人生を歩んでもらえるように、従業員が増えるたびに環境や制度を整えていきました。そのようにして増えた従業員が財産となり、現在の売上に繋がっています」
組織力を固め日本の成長を支える企業を目指す。
そんな山谷氏は1995年からこの業界で働いてきた。前職では、数多くの飛び込み営業でトップセールスマンになった経験を活かし、退職するまでの10年以上は取締役兼プレイヤーとして活躍しながら経営にも関わった。しかし、当時の日本には流通していなかった商品を海外から仕入れるなど、新規事業を推進するうちに次のステージで挑戦したい気持ちが強くなっていった。実際にヤマヤエレクトロニクスの設立2年目にはレアメタル事業に進出している。
「たまたまラジオを聞いて知ったイリジウムについて調べたところ、日本に輸入する事業にシナジー効果を見出しました。かつて議員をしていた祖父の人脈を頼ったところ、南アフリカ共和国の会社を紹介してもらい無事交渉が成立。GSCホールディングスという会社と独占契約を締結し、イリジウムとゴールドを扱うようになりました。ただ、翌年に新型コロナウイルス感染症が流行し、取引は中断しています」。
現在はカナダやモンゴルの会社と交渉を進めており、コロナ禍が収まればレアメタル事業は大きく進展すると予測する。また半導体と深く関わり、将来は空飛ぶトラックとして期待されているドローンについても新規事業を展開。ドローン操縦に関する資格を認定しているJUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)と提携し、長野県の八ヶ岳近くに教習所をオープンさせた。こちらもコロナ禍で休業中となっており、現状のビジネスは、半導体と電子部品の売上で支えられている。しかし、半導体産業には長年にわたって特有の課題が横たわる。
「シリコンサイクルと呼ばれているもので、好景気には供給不足に、不景気には供給過剰になり、約4年周期で景気循環を繰り返します。半導体メーカーと製造業者を仲介している商社こそが、この課題を解決できるはず。そのため自動運転やロボット、ドローンなどの技術進化による時代の変化を見据え、先の先を読み解きながら仕入先と顧客の双方に情報提供やビジネスの提案を行っています。その役目を担うには人が大事。たくさんの人に会って話を聞き、現状をよくしていくパワーを身に着けられる人材を教育することに力を入れています」。
同社が掲げる今後の目標はIPO(新規株式公開)だ。これまでは売り上げを伸ばすことに加え、個々の従業員の育成に注力してきたが、今後は組織の基盤を固めるマネジメントの強化も必須になる。そして、上場後にイメージしているのは、日本を代表する商社としてこの国の成長基盤を支える姿。日本を豊かな国にすることを最終的なテーマとしている。
「秋田県出身なので、取り組みたいのは地方創生です。約10年前に他界した両親は、適切な医療体制が確立されていなかったため、今でも心残りになっています。半導体を活かした新しい技術が解決できることもあるでしょうし、できるなら病院そのものをつくりたい。いつかは実現させたい思いをもち続ければ、実現の可能性はゼロではないと信じています」