
職人の社会的な認知度を上げ、地位向上を図る取り組み
神奈川県を中心に、主に新築戸建て住宅の外壁や屋根などの外装工事を手がける株式会社Neo(ネオ)。同社を2016年に設立した代表取締役の鈴木修一氏によれば、就労希望の人材は沢山いるが、それをきちんと活かせていないことが問題の原因だという。
「建築現場の職人さんに対して、粗野な人が多いという印象をもっている方もいらっしゃると思いますが、当社で働く人材はよい意味で建築業界らしさを感じさせない人材ばかりです。もちろん技術にも自信はありますが、弊社の人材がクライアントである元請け業者さんたちから親しまれているのは、人間的な側面も大きいと思います」
幼い頃から社長になることが夢だったという鈴木氏。建築業界に入った理由は、手っ取り早く起業のための資金を稼ぐためだった。しかし仕事をするうちにその面白さ、奥深さに惹かれ、いつしかこの業界で起業し、同時に業界の未来のために、変革を促していきたいと思うようになった。
「一般的に我々のような内外装の業者は、社員の他に専属の親方職人を起用して施工を行います。職人さんはフリーランスなので、税金や社会保険料、年金などは個人で管理する必要がありますが、この管理が杜撰な方が少なくない。インフラ整備のために職人さんはどうしても必要なので、これまでは厳しく指摘されてこなかった部分があったのかもしれません。ただ、胸を張って仕事を続けていただくためには、こうした部分から変えないといけないと考え、当社が依頼する親方職人には理解してもらっています」
税金、保険、年金などを理解し、必用な手続きをする。こうした事務作業を疎かにせず、社会の一員としての自覚をもつことが、建築業のネガティブなイメージを払拭する第一歩だと鈴木氏は考えている。同時に、人材育成についても、改善の余地があるという。
「当社は現場に職人たちが複数名で入ります。1人あたりの収益は低くなりますが、ケガや事故のリスクを減らすことができるメリットは大きいし、経験の浅い職人も、先輩の近くで多くを学ぶことができる。人材育成は、建築業界の大きな課題の一つです。体を使って仕事を覚えることも大事ですが、理屈を知っていればすぐに習得できることもあります。上達のスピードを上げるためには、分かりやすく説明できる人と、教える時間が必要です。設計以外の建築業は力仕事のイメージが定着しているように感じますが、実際には頭の柔軟性や発想力も求められる。業界全体として、学ぶことに対する意識改革が必要なのかもしれません」