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大出祐造
ODE YUZO

大出祐造

株式会社誠和 代表取締役

国際競争を勝ち抜くために
圧倒的劣勢の日本農業に改革を起こす
毎日口にしている野菜がどこから届くのかを、皆さんは考えたことがあるだろうか。TPP11や日米通商交渉などによって海外の農産物の輸入がこれまで以上に増えたり、海外の生産者が日本国内で栽培したりする可能性があり、国際競争を勝ち抜くためにも日本の農業は今まさに改革を迫られている。そのことにいち早く気付き、農業社会を本気で変えるために研究・開発を続ける企業があった。
大出祐造
必要なのは「勘」ではなく「データ化とデータ活用」

ハウス栽培・施設園芸において、高収量・高収益を実現する栽培システムを提案している株式会社誠和。
「注力しているのは、施設園芸用の環境制御機器や養液栽培システムの製造販売です。また、省エネ・省力機器の製造販売、大規模プラントの開発・製造販売も行っています。その一方で、日本最大級の栽培実証施設『トマトパーク』を運営中です」
そう話すのは、代表取締役の大出祐造氏だ。

大出氏の父が創業した当時、同社はプラスチック成形品の製造販売を事業としていたが、大出氏が入社した1981年に園芸栽培に関する研究を開始。土を移動出来ないハウス栽培には今後「連作障害」が出てくると予想し、土に変わる水耕栽培・養液栽培に目を付けた。2007年、大出氏が3代目社長に就任した際に経営体制を見直し、新規事業を整理。誠和の原点である農業に集中することにした。

「付き合いのあったスウェーデンの企業からの招待でオランダに行った時、世界の先進農業を見てカルチャーショックを受けたんです。先進国では1000平米で70トンのトマトを収穫しているのに、日本では10~15トンしか採れない。このままでは日本の施設園芸は世界競争に勝ち残れない、先進的な技術を取り入れなくては、と感じました」

熟考の末にたどり着いたテーマは“収量を上げる”。当時の日本の農業は、勘と経験が頼りの匠の世界だったが「これでは収量アップは無理。ハウス内をきちんと可視化すべき」と考えた。そこで同社は2011年、ハウス内の4つの環境因子(温度、湿度、CO2、日射量)が分かる測定器「プロファインダー」を開発し、農家への普及を図った。パソコン上でグラフ等で表示することにより、ハウス内環境の状態とその変化が視覚的に分かる仕組みを作ったのだ。

同社は養液栽培ではパイオニア的存在であり、トマト生産の分野においては日本一であるにも関わらず、その認知度は低かった。そこでダントツの一番になろうと決意し、2014年、施設園芸の最先端をいく日本最高級のトマト栽培施設「トマトパーク」の構想を打ち上げた。早々に2016年に開設し現在も運営を続け、3年連続50t/10a超えを達成した。

大出祐造
いかに農家を儲かるようにするか

トマトパークでは、施設栽培に特化した経営者育成を目的とした「トマトパークアカデミー」を運営している。大学の名誉教授も講師に迎え、1年コースと2年コースの全寮制という徹底ぶり。トップクラスの施設・設備を使って、同社が考える未来の農業を感じて欲しいと考えている。
「大学の農学部に行けば座学と理論は学べるけれど、うちでは実学を身体で覚えてもらおうと。作物の病気は経験がないと予防が出来ず、後手に回ってしまうんです」

測定器を導入した農家を集めて、全国で勉強会も開催している。せっかく数字が出ても、次の栽培に活かさないと意味がないからだ。
「トマトにとって良い環境さえ作れば、収穫量はすぐに2~3割上がります。最初はパソコンがない農家さんも居て、我々が初期設定のサポートをしたこともありました。今では農家さんが自らハウス内のデータを勉強会に持ち込み、それぞれの数値と考え方をもとに議論しています」
2018年には会員向けクラウドサービスを一新し、「プロファインダークラウド」として簡単に収量予測が出来るようにした。収量が予測出来ると、納入先の販売側との交渉が大きく変わってくるという。

かつては独自で開発してきたが、今は他社と協力する方法を選んでいる。
「農家を儲かるようにしたい、農業社会を変えたい」と本気で願うからこその選択だ。東京大学と連携で光合成のリアルタイム測定が出来る世界初の技術を開発しているほか、ノーリツやユニシステムとの業務提携、KDDI、TKCとも連携し、各々の得意分野を活かして開発に取り組んでいる。また、農林水産省の「スマート農業加速化実証プロジェクト」の一環として同省から事業を委託されており、農業の生産性を高めるために一層のスマート化に取り組んでいる。センサーを利用したハウスの暖房用燃料の残量可視化サービスなどであり、普及のために栃木県石油協同組合との連携も進めている。加えて、経済産業省の「地域未来牽引企業」にも認定されている。

「日本の農業は、他の産業と比べて20年も30年も遅れていると言われています。そのため、その伸びしろに目を付けた大手企業や海外からの参入が激化しています。従来の家族経営の形から大きく変わろうとしている今、このチャンスを活かして変わっていかないとこの先厳しい。だからこそ、データを測定して、誰がやってもロジックに基づいて一律に改善出来るような仕組みが必要なんです」

今後は、人手不足解消を目的としたロボットの導入を検討している。
「我々のサービスの原点は“いかに農家を儲かるようにするか”。これからも枠にとらわれない柔軟な発想と積極的な投資で、生産者がさらに儲かる手段を見つけていきます。『農業は遅れた産業ではなく、むしろ進んだ産業なんだ』と言われるようにしたい。日本の施設園芸は、もっともっと変わっていきます」
日本の農業のさらなる発展に貢献するため、誠和のチャレンジは続く。

大出祐造

株式会社誠和 代表取締役
https://www.seiwa-ltd.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。