
地球の再生力を高めるために
数々の環境関連機器を開発・製造し、企業や公的機関から注目される伸光テクノス。同社の代表取締役を務める木村氏は「あらゆる廃棄物は再資源化できます」と強調する。
その主力機器の一つが「加水分解装置」だ。食品ロスやプラスチックごみ、汚泥、畜糞などを200℃以上の水蒸気で圧力をかけ分解し、肥料や燃料を作る。使うのは水のみ。焼却をしないため、二酸化炭素やダイオキシンは発生しない。
同じく「油化還元装置」は、プラスチックなどの原油由来品を約600℃の熱で分解し、液体燃料、可燃性ガス、炭化物を生成。ガスを冷却し質の高い油を作るそのプロセスは、子どもの頃に理科の実験で行った、水を沸騰させ、水蒸気を冷やし真水を作る「蒸留」を思い起こさせる。
むろん技術は高度に専門的なものであり、簡単に説明できるものではない。しかし木村氏が語る言葉は明快で、聞く者を惹きつける力がある。
「ご存知の通り、プラスチックは石油から作られます。そして石油は動植物の死骸などが地中で時間をかけて変化したもの。豊かな土壌も、循環する自然のメカニズムで生まれました。それならば人間が出した廃棄物も、油や肥料などの資源に戻せるはずだというのが基本的な考え方です。地球には再生する力があります。資源が枯渇したり環境が汚染されるのは、再生力よりも人間が自然を破壊するスピードが速いから。私たちの技術は、人間の知恵で地球の再生力を高め、これを逆転させようというものなのです」
同社の技術にまず着目したのは、諸外国、とくに途上国だった。中国をはじめ、インドネシアやベトナム、タイなどの企業で、加水分解装置、油化還元装置の導入が進んだのだ。最近では、産油国であるサウジアラビアからの引き合いもあった。
「途上国は廃棄物の処理費用が安く、再利用のメリットがないため、ごみが埋め立てられるしかないという構造的な問題がありました。当社の機器は比較的低コストで導入できて、しかも生成した質の高い石炭代替品や堆肥を収入源にすることができるため、ビジネスとして有用であると認められたのです」
しかし、地球上の廃棄物の多くは、日本を含む、大量生産、大量消費を実現した国々によるもの。木村氏は、日本の廃棄物処理の在り方に疑問を呈す。
「日本のごみ処理は、汚いもの、臭いものを燃やしたり埋めたりして、目に見えなくするという発想が根強いのではないでしょうか。大量の廃棄物という未利用資源がほとんど活用されないまま、外国から石炭や天然ガスを買っている現状を少しでも変えていきたいと考え、活動してきました」