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金澤健一
KANAZAWA KENICHI

金澤健一

センシン電気株式会社 代表取締役社長

先代の教えを守りつつ
時代に合った事業展開を目指す
先代社長の逝去に伴い、事業を継承した直後に起きた新型コロナウイルス禍。絶体絶命のピンチに対し、センシン電気株式会社代表取締役社長の金澤健一はどのような覚悟で立ち向かったのか。会社を立て直し、さらに改革を進める氏の挑戦をご紹介しよう。
金澤健一
画像はイメージです。
先代の会社を残したいという思いで社長に就任

「とにかく会社を潰してはダメだという想いだけが頭にありました。必死でしたね」と語る、センシン電気株式会社代表取締役社長の金澤健一氏。同社は照明、空調、分電盤などの電気工事、無線を中心とする通信機器の設置、そして病院や工場で使われている測定機器の校正(測定値が正しいかどうかチェックすること)を業務とする会社だ。電気工事と通信機器設置の二つをまとめて行える会社は少なく、その点が大きな強みとなっている。

1980年に先代社長が興したこの会社に金澤氏が入社したのは92年のこと。高校の就職説明会でOBである先代社長と出会ったことがきっかけだ。「私は工業高校の電気科に在籍していましたが、通信分野にも興味がありました。センシンはその両方の事業をしている点が魅力でした。しかしそれよりも何よりも、社長ととてもくフィーリングが合ったことが入社の決め手でした」。入社後の金澤氏には、職人としての地道な下積み生活が待っていた。なかなか独り立ちできず、何度も辞めようと思ったと言う。「しかしその都度社長が側にいてフォローしてくれたおかげで辞めるにまでは至りませんでした。仕事のことからお酒の飲み方まで、社長は私に必要なことを全部教えてくれたんです」

そんな先代社長は98年に病に倒れてしまう。肺がんだった。そして役員会議が開かれるなか、社長からの推薦もあって次期社長候補に金澤氏の名前が挙げられた。「私より社歴の長い方もいましたが、皆職人気質で、会社全体のことを見られるのは社長の補佐的なこともしていた私しかいませんでした。ただ私は社長の親族でもないですし、社長になったら会社の負債も運命もすべて背負わなくてはならない。引き受けて自分に何かメリットはあるのかと、随分悩みました。しかし闘病生活で苦しみながらやつれていく社長の姿を見て、『この会社を潰すわけにはいかない。ここで私が継がないと、社長を裏切ることになる』と思ったのです。会社を継いで、先代社長がやりたくてもできなかったことをやろうと覚悟を決めました」

そして2020年3月、先代社長が他界したことでセンシン電気の2代目社長に就任した金澤氏。しかしそんな氏を待ち受けていたのは、新型コロナウイルスの蔓延だった。

金澤健一
コロナ禍の逆境をバネにして大胆な改革を実行

コロナ禍の影響でほとんどの工事にストップがかかり、コロナ以前から経営の危機に陥っていたセンシン電気はさらに危機的な状況に追い込まれた。「先代はもういないし、お金は入ってこない。どうすれば資金調達できるだろうかと考え、各所を回って頭を下げる毎日でした。幸い弊社は長い実績があったので、それを評価されて何とか資金調達をすることができました。先代が築いた信頼関係が厚かったんだなと感じましたね」

その一方で、社内の体制にも大きくメスを入れた。それまでは、案件ごとに担当する職人にすべてを任せていた。そのため部門間の連携が取れておらず、また各職人は外注先について、皆馴染みのある所に見積もりもとらず言い値で出していたため、その費用が売り上げを大きく圧迫していた。そこで職人に任せきりにするのを止め、すべての案件を経営陣が管理・チェックする体制に切り替えたのだ。

「当然、職人たちからは反発もありました。しかし責任も負債も負っているのは私。いざとなったら自分一人になっても続けてやろうと思っていたので、そこは強く押し切りました。コロナ禍の状況だからこそ、逆に開き直って改革できた部分はあります。もっとも当時の心境を考えると、コロナ禍があってよかったとは今も思えないですけどね」

そして徐々に発注も増え、業績を回復していったセンシン電気だが、改革は今後も継続していくと語る金澤氏。「この仕事はマニュアル通りにはいかないことも多いので、職人の技術を必要とする部分も多いです。ただ、その人がいなかったら回らないようではダメ。作業を分担して、ある程度誰でもできるような仕組みをつくっていきたい。さらに、時代の変化に柔軟に対応できるように、これまでとは違った考え方や価値観を持った人材を採用していきたいですね」。また、これまで役所や飛行場などの公共施設がメインだったクライアントを民間にも広げるほか、測定機器の校正事業にも力を入れていきたいと言う。

「工事は波があるのに対し、測定機器の校正の仕事はコロナ禍でも減らなかった。メンテナンス関連は安定した収入を得られるのが魅力。これまでこの事業は売り上げの2割程度でしたが、リスクヘッジのためにここを強化していきます」。電気・通信工事という柱、そしてそれによって培った技術があることで、専門業者やメーカーよりもリーズナブルな料金を提示できる点が強みだ。「先代が長年築き上げてきたもの、思いなどを上手く引き継ぎ、今の時代にあったやり方、方法で事業を拡大していきたい」と語る金澤氏の挑戦は、まだ始まったばかりだ。

金澤健一

センシン電気株式会社 代表取締役社長
https://senshin-e.co.jp/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。